記者
メイジノオト編集部
2023/01/20
明治村内にある「宇治山田郵便局舎」が、約4年にわたる修理工事を終えて2022年11月3日より一般公開されました。
そこで今回は、緑の外壁が映える往時の姿を取り戻した「宇治山田郵便局舎」のみどころをご紹介していきます。
明治42(1909)年、伊勢神宮外宮大鳥居前の角地に建てられた(当時の郵便局名称は「山田郵便局」)郵便局舎です。
逓信技手の白石圓治が設計し、郵便・電信・電話事務を担う拠点として利用されました。その後、役目を終えた郵便局舎は、昭和44(1969)年、博物館明治村に「宇治山田郵便局(後に、宇治山田郵便局舎と改称)」として移築・公開されました。
V字型に連なる建物の中央部分に円形ドームを配置した独特で斬新な洋風意匠は、明治期の郵便局建築の中でも異彩を放ちます。平成11(1999)年には、明治時代の本格的な木造郵便局舎で、現存する唯一の事例として「国の重要文化財建造物」に指定されています。
今回の保存修理工事によって、耐震補強、銅板屋根の葺替え、内外装の全面改修を行い、切手倉庫を創建当時の煉瓦造に復原しました。
また、室内展示では、令和3(2021)年に郵政創業150年を迎えた「郵便制度」のはじまりから、宇治山田郵便局舎が明治村に移築された昭和時代頃までを対象に郵便が社会に果たした役割や、当時の伊勢の街の様子など歴史的な背景を紹介するコーナーを新設しています。
修理前の宇治山田郵便局舎を知っている方なら、最初に「なぜ外壁が緑?」と疑問に思うはずです。修理前の塗装は、青色の顔料が退色し、黄色の顔料が残留している状態でした。
そこで、今回の塗り直しでは、創業当時の色を調査し限りなく当時の姿に近い状態に再現されました。
外観は柱や水平材などの軸部と、それらに囲われた板張り部分や漆喰塗部分からなるハーフティンバー様式に倣っています。ヨーロッパでよくみられる建築方式で、本来は柱や梁がむき出しになりその間を土壁などで覆った形のものです。
よくみると、漆喰塗部分の細やかなレリーフも見事です。
建物に付随する窓は3段、角塔には4段の回転窓が付けられています。他ではあまりみられない形式です。
中央には円錐ドームの屋根を、両翼部には寄棟の屋根を、正面の左右には角塔の上に小ドームをのせています。
全面的に葺き替えるにあたり、表面を酸化させ、化学変色させた「硫化銅版」を使用。この処理によって、数十年かけてより自然な緑青の姿に近づくことが期待されます。
正面入口を通ると円形の「公衆室」と呼ばれるホールがあります。それを囲うように窓口カウンターが配置されています。
ホールの天井は、隣接する翼部より一段と高くされ、高窓から採光できるつくりになっています。当時の郵便局舎としてはめずらしいスタイルです。
窓口と並んで私書箱も設置されています。
宇治山田郵便局舎では、窓口業務を行っていたカウンター、郵便物の発着口、切手倉庫、電話交換室など、当時の郵便局機能を支えていた各部分を見ることができます。
新設された展示コーナーは、もとは郵便物の仕分けや事務作業を行う現業室。往時の郵便業務の歴史がわかります。
これまで非公開だった、 電話交換室、宿直室、電話配達人控室なども今回のリニューアルによって公開されました。
重要文化財として指定されている局舎の建築スタイルを多角的に堪能できるだけでなく、明治時代の郵便局の機能にも触れられます。
建物裏手にあるのは、倉庫が一部屋丸ごと金庫になっている「切手倉庫」。木造建築物の中に煉瓦積の壁が立つ二重構造です。
煉瓦積の壁のほかにも、波形鉄板を張った天井、鉄製防火シャッター、鉄製防火戸など、耐火・防火・防犯に配慮した厳重なつくりになっています。
復原した切手倉庫の構造を見学者に体感していただくため、本来は全面漆喰仕上げとなる内壁の一部を煉瓦壁のままで仕上げています。
こちらは基礎通気孔です。中央のツマミを回すと中のフタが閉まり、火災の際に切手倉庫へ床下から延焼することを防ぎます。
最後に宇治山田郵便局舎でぜひ体験していただきたい「はあとふるレター」をご紹介します。
お手紙をご用意いただき、申込書とともに窓口に渡すだけで、手紙に書いた住所宛に10年後に手紙が届くんです。
筆者も小学生のときに自分に宛てて書いた手紙が、10年後に届いた思い出があります。
ほかにも、お手紙を投函すると、宇治山田郵便局舎を描いた明治村オリジナルの消印を捺印していただけますよ。(63円以上の切手が必要)
今回は、現在と過去をつなぐ宇治山田郵便局舎をご紹介しました。ぜひ足を運んでみてくださいね。
【宇治山田郵便局舎】
村内所在地:4丁目46番地
記者
メイジノオト編集部
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