記者
ライターいずのうみ
2023/07/06
清水寺をはじめ八坂神社、知恩院、建仁寺など、有名な神社仏閣が集まる京都の人気エリア・東山。このエリアの円山公園の一角に1909(明治42)年に建てられた「長楽館」があります。
長楽館は、明治の煙草王と呼ばれた村井吉兵衛の別邸跡で、当時は迎賓館として活用されていました。現在、長楽館(本館)はカフェ・レストラン・スイーツブティックとして一般客も利用でき、併設するホテル(新館)に宿泊もできます。
今回は、実際に長楽館へ行ってきました!明治時代から歴史が続く長楽館の魅力と、新館の「HOTEL CHOURAKUKAN」について詳しくご紹介します。
長楽館は、煙草王と呼ばれた明治時代の実業家・村井吉兵衛によって1909(明治42)年に建てられました。設計者は立教大学校長で建築士でもあったアメリカ人技師J.M.ガーディナー。重厚なインテリアをはじめ、暖炉まわりや壁、天井の細かなレリーフなど細部までこだわり、ヨーロッパのあらゆる様式が組み込まれています。
J.M.ガーディナーは京都の聖ヨハネ教会堂の建築も手掛けており、細部にゴシックのデザインをまじえた外観や美しいトレーサリーのステンドグラスが特徴の建物は、明治村で見ることができます。
迎賓館として建てられた長楽館には、日本やイギリス、アメリカの著名なVIPも数多く滞在し、皇族や元勲(明治維新に大きな勲功のあった人)、英国皇太子などの国賓も訪れたとされています。また、「長楽館」の名称は初代内閣総理大臣・伊藤博文が宿泊した折に命名されました。
伊藤博文直筆の「長楽館」と書かれた額は、今も館の2階中央の壁に掲げられています。
建物は1階・2階ともに特色が異なる部屋が並び、ステンドガラスや天井のレリーフ、暖炉に使われている素材など、細かなところまでこだわりが詰まっています。また、あちこちに置かれている家具や調度品の中には建築当時から使われている貴重なものも。
長楽館は、内部の凝った意匠や規模の大きさから、明治後期における和洋折衷の住宅建築の代表例として価値が高いと評価され、建物と家具30点を含めて京都市の有形文化財に指定されています。
長楽館は市の文化財に指定されていながらも、カフェやレストランの営業やウェディング・展示会の開催などにより、実際に触れて明治時代の雰囲気が体感できる「動態保存」を行っています。
本館の1階と2階には合わせて10以上の部屋があり、それぞれ異なる目的で使われていました。建築様式や装飾もそれぞれ趣向を凝らしてあり、カフェ・レストランの利用者はカフェのスペースを自由に見学可能です。
ここでは、長楽館の代表的な部屋をいくつかご紹介します。
応接間として使われていた部屋です。現在はカフェのアフタヌーンティー専用室として使われています。繊細さ・優美さ・軽快さが特徴のロココ様式を取り入れていて、天井・壁には花やリボンのデザインを貴重とした漆喰彫刻が施されています。
フランス・バカラ社製のシャンデリアが室内をよりエレガントに演出。ロココ様式の応接間は、現存する日本の西洋館で最大規模と言われています。
半地下に造られているこの部屋は、かつてビリヤード台が置かれていました。ビリヤードはキュー(球を突く棒状の道具)の先端にチョークを塗るのですが、手についたチョークを落とすために設けられた大理石の洗面台は現在もそのまま残されています。
優しく光を取り込むステンドグラスは、本館の最上階にあったものを移動したとのことです。
建築当時はサンルーム(温室)として使われ、たくさんの観葉植物が育てられていた一室。現在は洋菓子や手土産用の菓子が購入できるスイーツブティックとして利用されています。
床には幾何学模様のタイルが当時のまま残り、石壁にはイスラムのモスク(礼拝堂)のレリーフが施されています。
煙草王と言われた村井吉兵衛にちなみ、当時販売していた煙草のパッケージを使ったお菓子が人気です。
2階中央の部屋は、当時は喫煙室として使われていました。入り口の上には伊藤博文直筆の額が掲げられており、長楽館のシンボル的な部屋だったのではないでしょうか。
ヒスイ・メノウを使用した象牙細工で作られた置物や実際に使われていた螺鈿(らでん)の長椅子(市指定有形文化財)が見られます。
2面の大きな窓から自然光が注ぐ、明るい雰囲気に包まれた部屋です。当時は客室として使われていたため、入り口には小部屋のような短いアプローチがあることが特徴。現在はカフェや結婚式の会場に使われています。
このほかにもいくつもの部屋があり、それぞれ異なる建築様式やインテリア、歴史ある家具や調度品に囲まれて非日常な時間が過ごせますよ。
アフタヌーンティーセットは要予約ですが、カフェは予約なしでも利用可能。部屋の希望があれば予約状況に応じて案内してもらえることも。レストランはコース料理の提供のため、事前に予約が必要です。シェフのこだわりが詰まったスイーツや料理に舌鼓を打ち、優雅なひとときを過ごしてみては。
長楽館の本館1・2階はカフェ・レストランとして利用や見学ができますが、3階は通常非公開とされています。
しかし、新館の「HOTEL CHOURAKUKAN」に宿泊する人は、希望に応じてスタッフに案内してもらいながら見学が可能です。今回は、本館3階の「長楽庵」と「御成(おなり)の間」も見学させていただきました。
京都市上京の茶道流派・表千家にある茶室「残月亭」を模したといわれる部屋。正面の半月型の窓には明治時代の和ガラスが今も残されており、左右の丸いステンドグラスは「桜」「紅葉」を表現しています。
窓の外には円山公園の木々がひしめき、春には大きな枝垂桜も見下ろせます。
床の間の脇に「違い棚」や「花頭窓」を備えた書院造りの大広間。天井のシャンデリアにはバカラ社製のクリスタルが用いられており、和洋折衷で独創的な空間です。
折上格子天井や襖の引手や釘隠しなどには村井氏の家紋「三つ柏」があしらわれ、細部までこだわり抜いた豪華さを感じられます。
明治時代に建てられた洋館「長楽館」とつながっている新館は「HOTEL CHOURAKUKAN」。客室は全6室で、無垢の木材をふんだんに用いた内装や京都の名品を揃えたアメニティでぜいたくなひとときが過ごせます。
京都市の中心にありながらまちなかの喧騒を離れ、東山の緑に囲まれた癒やしの空間。春は桜、夏は五山の送り火、秋は紅葉など四季折々の京都の山々を一望できるのも大きな魅力です。
「HOTEL CHOURAKUKAN」の最大の魅力は、他では体験できない非日常の過ごし方ができること。朝食や夕食、ティータイムは長楽館で過ごせて、まるで明治時代の迎賓館に招待されたゲストのような気分が味わえます。
書斎として使われていた場所は、現在はホテルフロント兼宿泊者専用のプライベートバー「ライブラリーバーマデイラ」です。当時のまま残されている重厚な本棚には、ポルトガルのマデイラ島で造られている美酒「マデイラワイン」が並びます。
新館の4階にはプライベートラウンジやライブラリー、展望スペースがあり、宿泊者が思い思いの時間を過ごせる空間が広がります。
プライベートラウンジは無垢の木や、市指定有形文化財の家具に囲まれた穏やかな空間にコーヒー・紅茶などのフリードリンクが充実。ライブラリーには京都に関する本や洋館・料理・美術関係の本がそろい、書籍は部屋に持ち帰ってゆっくり読むこともできます。
すぐ横の展望スペースは、長楽館本館のレンガを目前に、東山の山なみや知恩院、平安神宮など東山の名所が一望でき、絶景を独占できますよ。
周辺には八坂神社、建仁寺、知恩院、高台寺など京都でも有名な古刹があり、のんびりと散策するのも良いでしょう。長楽館からすぐの円山公園は、明治19(1886)年に開園した京都市内で最も古い公園とされ、桜の名所でもあります。
歴史的建造物が多く残る京都ですが、明治時代の雰囲気を身近に感じながら宿泊できる施設はとても少ないのでは。
伊藤博文や大隈重信をはじめ国内外の数々の著名人が訪れた迎賓館で、優雅にアフタヌーンティーやスイーツが楽しめる「長楽館」は、ぜひ訪れてほしいスポットです。
さらに「HOTEL CHOURAKUKAN」に宿泊すれば、きっと忘れられない思い出になりますよ。
京都へ行く際には、ぜひ「長楽館」と「HOTEL CHOURAKUKAN」をチェックしてみてくださいね。
所在地 |
京都市東山区八坂鳥居前東入円山町 604 |
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電話番号 |
075-561-0010 |
公式サイトURL |
https://www.chourakukan.co.jp/ |
営業時間 |
11:00~18:30(L.O.18:00)※アフタヌーンティーは12:00〜18:00 |
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電話番号 |
075-561-0001 |
営業時間 |
11:00~18:00 |
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電話番号 |
075-561-0001 |
営業時間 |
11:30~15:30(最終来店時間14:00)/17:30〜22:00(最終来店時間19:30) ※コース料理のため要予約 |
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定休日 |
火曜日 |
電話番号 |
075-561-0001 |
記者
ライターいずのうみ
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