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【重要文化財の修理が見学できる!】「三重県庁舎」修理工事レポート

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建築

2023/04/25

【重要文化財の修理が見学できる!】「三重県庁舎」修理工事レポート

メイジノオト編集部

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メイジノオト編集部

この記事は、2023年4月25日に書かれた記事です。

2023年6月末で「三重県庁舎」の工事は竣工しています。

 

明治村1丁目にある「三重県庁舎」が、2022年9月~2023年6月末の間、車寄せ他の木部腐朽箇所の取替え修理を行っています。

明治村では「本物の価値を残す、伝える」をモットーに、文化財の修理にも取り組んでいます。建造物では11件が国指定重要文化財、1件が愛知県の有形文化財、歴史資料では3件が国指定重要文化財に指定され、その他、ほとんどの建造物が国の登録有形文化財に登録されています。

工事期間中は、滅多に見られない文化財が修理されている様子を外から見ることもできるんです。

そこで今回は、三重県庁舎部分修理工事の様子をご紹介していきます。

三重県庁舎とは?

三重県庁舎は、三重県令(現在の知事)岩村定高の発案による洋風県庁舎です。明治13(1880)年には明治天皇も訪れており、昭和39(1964)年まで使用されていました。白壁と中央の玄関を軸にしたつくりが非常にうつくしい当時の典型的な官庁建築です。

三重県庁舎は、間口が54mに及ぶ大きな建物で、正面側に2層のベランダがめぐらされています。中央に玄関と車寄せを置き、前面にベランダをつけて左右対称とする構成は、明治9(1876)年に建てられた内務省庁舎にならったもの。

明治初期の木造官庁舎の典型といえる建物であり、国の重要文化財(建造物)に指定されています。

設計者は当時、県の土木係にいた技術者である清水義八。清水はその後、同市内に造られた三重県尋常師範学校・蔵持小学校(明治村内1丁目3番地)も手がけました。

今回の修理工事のポイント

今回の修理では、車寄せの屋根を支える木製柱の上部に腐朽が著しく見られたことから、外からは見えない構造部材の腐朽がどこまで及んでいるかを調査し、腐朽部分を取り替えることを目的としています。

また、長年、構造部材への雨水の侵入をもたらしていた車寄せ屋根の樋の問題点の改良にも取り組んでいます。

<主な修理内容:車寄せの部分修理>

① 柱・梁・手すり解体復旧、塗装の塗り直し

② 屋根・水切鋼板の解体復旧

③ 木部腐朽範囲の調査、取替え

④ 2階ベランダ床の木部腐朽範囲の調査、取替え

 

① 梁・手すり解体復旧

▲解体前の様子

解体は、木製の手すり、屋根銅板、軒蛇腹と上から順番にすすめていきます。

▲車寄せ上部手すりの解体の様子

上の写真を見ていただくと、柱の上部の劣化が著しいことがわかります。

こちらが手すりがすべて撤去された状態。

車寄せの頂部に廻っていた手すりと屋根の銅板葺、外装の木材などを解体すると、小屋組や軸部である梁・桁があらわになりました。

実際に解体してみると、木部の腐朽範囲が当初想定していたよりも広く及んでいることが判明。さらに、車寄せの梁や桁、左右に3本ずつ立っている円柱の腐朽は甚大で、腐朽菌の繁殖や白蟻の侵入の痕跡が見られました。

② 屋根・水切り銅板の解体復旧

そこで今回の工事では、一部の柱と正面の桁材は取替えながらも、古材を活かせる部材では継木補修を施すことに。

実際の作業は、一度解体して古材の傷み具合を調べ、必要に応じて旧材と新材を組み合わせるなど、特殊な工程が必要になるため、修理工事では、職人さんの高度な技術能力が要求されます。

文化財は、当初材をできるだけ残すことを目指して修理します。そのため、傷んでいるから新しいものに変えればいいというわけではありません。旧材と新材を組み合わせながら、継木をしていきます。

③ 柱の解体・復旧、雨水対策

車寄せの屋根に降った雨水の排水用の竪樋(たてどい)は柱の内部に隠れています。雨水の排水過程で梁・桁や柱などに断続的に水が浸入していたため、部材の腐朽が進んだと考えられます。

▲取り外しが完了した円柱

車寄せ全体を揚屋(ジャッキアップ)し、4器のやぐらで梁、桁を支えて柱を人力で取り外しました。

旧材の腐朽が進んでいたため、新しい円柱をろくろ加工して取替えを行いました。

排水用の竪樋(たてどい)は柱の内部に隠れているため、外からは見えないようになっています。設計者のこだわりが感じられますね。

さらに、雨水の浸水対策として、銅板の水切りを要所に挿入。こうすることで、外壁をつたって落ちる雨水を建物の外に導き、内部に雨水が侵入するのを防ぐ効果があります。また、上の写真のように柱を受ける石の礎盤には鉛板をのせ、木の柱が根元から腐るのを防ぎます。

木材には補修工事が行われた年が刻まれています。こうすることで、次に修理に携わる人がわかりやすくしているのだそう。

よくみると、明治の創建時に書かれた番付と呼ばれる文字も残っていました。これは、部材の位置を表しています。

文化財の修理の様子を見学してみよう!

今回は、三重県庁舎の修理工事の様子をご紹介しました。工事期間中、現場では仮囲いの一部が透明パネルになっており、工事の様子を見学できます。

目の前で文化財の修理の様子をご覧いただける貴重な機会です。修理工事は、2023年6月末までの予定。ぜひ、明治村へ訪れた際は、のぞいてみてくださいね。

三重県庁舎
村内所在地:1丁目13番地

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