帰雁来燕(上)

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明治時代の文化 歴史

2026/03/20

帰雁来燕(上)

明治村学芸員

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二十四節気にそえて 4

 

 

<春分> 冬が去って春らしさが日ごとに感じられるとされる日    (新明解国語辞典)

 

 

鶯の鳴き声は「耳」で春を感じさせてくれますね。10日ほど前から、明治村では鶯の「ホーホケキョ―」の囀りを耳にするようになりました。まだ慣れていないのか、いささかたどたどしいように聞こえます。このコラムを始めるときに季節感のあるものとはならない、と書きましたが、今回と次回は二十四節気をさらに細分化した七十二候に関連した話題をお届けしたいと思います。

 

<昭憲皇太后御料車>

七十二候に関連している「あるもの」は、昭憲皇太后御料車(5号御料車)の中にあります。昭憲皇太后御料車は明治35(1902)年に、初の皇后用として製造された車両です。

 

車内は天井画、そして昭憲皇太后のご実家の家紋・藤をあしらったファブリック類は注目に値します。しかしながら、車両保護のため、通常は車両から1メートルほど隔てた位置に設置された見学通路からしかご覧いただけません。その不便を解消すべく、見学通路には車内の様子を写した写真と説明を載せた解説板を設置しています。

 

 

 

昭憲皇太后御料車の御座所には、川端玉章の手による帰雁来燕(きがんらいえん)を描いた天井画があります。片側に帰雁を、もう一方に来燕が描かれています。この帰雁来燕は、二十四節気をさらに三つに分けた七十二項に取り上げられているのです。

 

 

<帰雁来燕(上)>

帰雁来燕とは文字通り、「雁が帰り燕が来る」ことを指し示し、明治村では「帰雁来燕」と紹介していますが、季節の順では来燕帰雁となります。

来燕は二十四節気の「清明」(4月前半)の最初の候「玄鳥至(つばめきたる)」を、帰雁は同じく「清明」の二番目の候「鴻雁北(こうがんかえる)」を指すことから、本来ならば、「帰雁来燕」ではなく「来燕帰雁」とするのが、正しいのかもしれません。

今回は季節の順に従って、「来燕」をご紹介いたします。

 

 

<玄鳥至>

玄鳥至(つばめきたる)は春分の次の節気・清明の最初の候にあたります。

漢和辞典によると、「玄」は黒を意味し、「玄鳥」は「つばめ」を指し、「至」は「到着する」という意味なので、「燕が来る」と読ませています。

燕は天候や気温に左右されず、日照時間で渡る時期を判断すると言われ、毎年決まった時期にやって来ます。それがちょうど4月の初め、春爛漫の頃です。燕の姿は本格的な春の到来を告げています。

 

 

<窓の景色と天井画の一体感>

この御料車の椅子は進行方向ではなく、窓に向いて固定されています。つまり、昭憲皇太后はこの御料車をご利用された際には、窓の外の景色を眺めて移動されていたと考えられます。車窓からは、季節の鳥たちが羽ばたいている様子を目にしたことでしょう。そして、ふと車内の天井に目を遣ると、そこにはまさに空を飛んでいる鳥を見上げているかと見紛うような鳥の姿が目に入ってきます。(つづく)

 

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