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おしゃれでカラフル!明治時代に活躍した浮世絵師5選

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アート カルチャー 暮らし

2023/05/29

おしゃれでカラフル!明治時代に活躍した浮世絵師5選

山村 咲木

記者

ライター山村 咲木

わが国、日本が誇る芸術作品「浮世絵」。日本が独自に生み出したアートのひとつです。海外からの評価も高く、世界中から愛され続けています。

浮世絵と聞くと、江戸時代をイメージする人も多いのでは?富士山と立派な波の絵が有名な葛飾北斎や東海道の宿場の風景を描いた「東海道五十三次」で知られる歌川広重など……。江戸時代に活躍した浮世絵師たちの作品が頭に浮かびますよね。

そんなみなさんにお伝えしたい。実は、明治時代にも浮世絵は描かれていたのです。

「浮世絵」ってなに?

そもそも、「浮世絵」とは?

江戸時代から大正時代にかけて描かれた風俗画を「浮世絵」といいます。題材は、遊女や役者、風景や当時流行していた芝居や遊び、はたまた世間をにぎわせた事件・出来事などが取り入れられていました。美人画や歌舞伎画は、今でいうアイドルや芸能人のブロマイド・ポスターのようなものだったのだとか。

浮世絵には、肉筆画と木版画の2種類がありました。目覚ましいのは木版画の浮世絵。最初は墨の一色でしか表現されていなかった浮世絵ですが、版画技術の進歩によって多くの色を取り入れた鮮やかなものへと進化していきました。

江戸時代中期には、多色で摺られた木版画の浮世絵「錦絵」が江戸の街で確立され、色とりどりの華やかな浮世絵が、身分の高い人々から市井の人々にまで幅広く人気をあつめました。「錦絵」の色彩と生き生きとした表現は、現在でも世界中で高く評価されています。

明治時代に活躍した浮世絵師5選

明治時代の浮世絵には、今みてもおしゃれでカラフルな作品がたくさん!

ここからは、明治時代に活躍した絵師たち5人を、おすすめ作品とともにご紹介していきます。

・月岡芳年(つきおかよしとし)


月岡芳年 撰東錦絵 「延命院日当話」 東京都立図書館

明治を代表する浮世絵師と言っても過言ではない「月岡芳年(つきおかよしとし)」。江戸時代末期から明治時代にかけて活躍しました。人気浮世絵師 歌川国芳を師匠に持ち、数多くの作品を世に生み出しました。


月岡芳年 左:「森坊丸」、右:「滋野左ヱ門佐幸村 」(魁題百撰相 謎解き浮世絵叢書より)

芳年の代表作といえば「血みどろ絵」!「血まみれ芳年」と言われるほど、痛々しく残酷な流血シーンをたくさん描いています。赤い血の色がこれでもかというほど強調された生首や血しぶき、はたまた妊婦を吊るし斬りにしようとする恐ろしい作品など。見ているだけでも痛そう……。

本記事に掲載している作品は、まだ生やさしい血みどろ絵です。中には表現がかなり強烈な作品もあるので、気になった方はこっそり調べてみてくださいね!

月岡芳年 左上:「うるささう 寛政年間処女之風俗 」右上:「いたさう 寛政年間女郎の風俗 」左下:「はづかしさう 明治年間むすめの風俗 」右下:「おきがつきさう 明治年間西京仲居之風俗 」(風俗三十二相より)

流血表現で有名な芳年ですが、一方でぜひみなさんにおすすめしたいのが、芳年が描く美人画「風俗三十二相」。

お色気ムンムンの美しい女性たちが、ポーズも目線も決まって明るいタッチでカラフルに描かれています。着物の柄・色もバリエーション豊かで、とってもおしゃれ。

月岡芳年 「新形三十六怪撰」左:「地獄太夫悟道の図」 右:「四ツ谷怪談」(部分) 東京都立図書館

その他、妖怪画の連作「新形三十六怪撰」は目くるめくあやかしの世界が奇妙でおもしろいのです。なんともいえない気味悪さとあざやかな色彩が融合して生み出された幻想世界は、今見ても新鮮で真新しい感覚に陥ります。

・河鍋暁斎(かわなべきょうさい)


河鍋暁斎 吉原遊宴図 (画鬼・暁斎 KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドルより)

幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師であり日本画家でもある「河鍋暁斎」。幼い頃から絵を描くことが大好きで、7歳という若さで歌川国芳から浮世絵を学び、のちには狩野派の絵をしっかりと学んだ天才絵師です。

「画鬼」と呼ばれた河鍋暁斎の作品は、日本絵史上最大の画派である狩野派の流れを浮世絵に取り入れた独特な世界観を持っています。正統派の水墨画や動物画、美人画に妖怪画などの異ジャンルを組み合わせ見事に描き上げた作品たちは圧巻です。

河鍋暁斎 惺々狂斎画帖 (画鬼・暁斎 KYOSAI 幕末明治のスター絵師と弟子コンドルより)

大きな化け猫の登場に、驚く2人の男が描かれた「惺々狂斎画帖」。現代人の目で見てもユーモアにあふれ、ちょっと笑える絵も多く、なぜこの絵を描いたのだろうか?なんて考えるのも楽しいんです。


河鍋暁斎「千代寿」左上:「士」「大平」、右上:「商」「はん昌」、 左下:「工」「はんゑい」、右下:「農」「豊年」(部分)  東京都立図書館

士農工商の繁栄を祝った錦絵「千代寿」シリーズは、シンプルな描線にやさしい色味で構成された作品。薄いピンク色や水色に濃い赤色がアクセントとなり、可愛らしいですよね。

お雇い外国人のイギリス人建築家 ジョサイア・コンドルが弟子となり、師の暁斎について記した本がヒット。海外に暁斎の名が広まり、世界的にも有名な絵師となりました。

・小林清親(こばやしきよちか)


小林清親 両国花火之図 (浮世絵名作選集 清親より)

長い浮世絵ブームも下火になりつつあった明治時代に「最後の浮世絵師」と言われた浮世絵師が「小林清親」。清親は、光と影を効果的に用いた技法「光線画」を確立したことで知られています。


小林清親 大川岸一之橋遠望 (浮世絵名作選集 清親より)

夜空や月、灯りなどを描いた風景画が多く、光と影のコントラストが美しく繊細な作品で人気を博しました。

西洋画の手法を版画というジャンルに取り入れた点も魅力の一つ。西洋の水彩画にも似た情緒あふれる水々しい風景を描いているのが特徴です。


小林清親 「上野公園画家写生」東京都立図書館


小林清親 「新橋ステンション」 東京都立図書館

明治9年から14年の5年間にわたり東京の風景全93景を描いた「東京名所図」は、明治時代初期の東京の四季折々の姿を見ることができる貴重な作品です。近代の風景版画の先駆けとなった清親は「明治の広重」と呼ばれることも。

清親の描く絵は、光と影の微妙な揺らぎを繊細に表現しており、見ているとなんだかほっとする、心が落ち着く作品です。

・豊原国周(とよはらくにちか)


豊原国周 勧進帳「歌舞伎十八番之内 勧進帳」「武蔵坊弁慶 市川団十郎」「貝の音にちらすな関の八重桜 九世三升」 東京都立図書館

幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師「豊原国周」。とりわけ、歌舞伎役者を描いた役者絵が多くあります。当時活躍していた人気役者たちの絵を書き残した国周は、「明治の写楽」とも呼ばれているそうです。


豊原国周 左:大杯觴酒戦強者「市川左団治演芸之内」「大杯觴」「馬場三郎兵衛」、右:復讐誓彦山「明治六酉年 復讐誓彦山」「一味斉娘おその 坂東彦三郎」(部分) 東京都立図書館

画面いっぱいに役者の顔を描く「大首絵」。役者一人ひとりの表情が、見事に表現されていますよね。見栄を切った瞬間の鋭い目つきは、歌舞伎役者それぞれの特徴をしっかりと掴んでいます。濃淡がはっきりした色彩も、バランスがよく目をひきます。


豊原国周 国性爺合戦「和藤内紅ながし 市川左団次」 東京都立図書館


豊原国周 夏祭浪花鑑「三河屋義平治 市川左団次」「団七九郎兵衛 市川団十郎」 東京都立図書館

一人の役者を三枚に分けて描く真新しい構図の役者絵。3枚使いでダイナミックに描かれる歌舞伎役者たちの姿は、今にも飛び出してきそうな迫力!

豪快で力強い画面構成は、破天荒だった国周らしいと感じます。明治時代の歌舞伎を盛り上げた役者絵は、彼なしには語れません。

・楊洲周延(ようしゅうちかのぶ)


橋本(揚州)周延 「西南記事、賊軍鹿児島乱入之図」 東京都立図書館

最後にご紹介するのは、「楊洲周延」。歌川国芳、三代歌川豊国、豊原国周の3人の大物浮世絵師を師匠に持っていました。


橋本(揚州)周延 「西郷城山戦死の図」 東京都立図書館

浮世絵師である一方、戊辰戦争で戦った武士でもあった周延。細かい描写に臨場感溢れる戦争絵は、実際の戦争を経験した周延ならではのものです。そんな戦争絵の中には、西南戦争で戦うあの有名な西郷隆盛を描いた作品も!


橋本(揚州)周延「時代かゞみ」左上「天保の頃 正月三日愛宕山毘沙門の使」、右上:「明治 隅田川ボート競走会」、左下:「建武之頃 竹馬の古図」 、右下:「享徳之頃 まき絵し貝すり」(部分) 東京都立図書館

周延の作品は、戦争絵だけではありません。ぜひおすすめしたいのが、周延が明治29年から約30年にわたり制作した美人画「時代かゞみ」。当時のさまざまな階級の美女たちの姿が、愛らしく繊細に描かれています。

美しい女性たちは、どの姿もほほえましいですよね。


橋本(揚州)周延 「開花貴婦人競」 東京都立図書館

華やかな宮廷を彷彿とさせる洋装の貴婦人たちが描かれた「開花貴婦人競」。さまざまな色を使い、植物や洋服の柄など細かい描写で当時目新しかった貴婦人たちの姿を描いています。華やかな洋装の絵は、明治という時代を感じさせる貴重な作品です。

明治に活躍した浮世絵師5選、いかがだったでしょうか。

一言で浮世絵と言っても、ひとつひとつ表現方法も題材も違うものばかり。大きく時代が変わった明治時代を駆け抜けた浮世絵師たちならではの個性豊かで色鮮やかな作品は、見れば見るほど虜になること間違いなし。

ぜひあなたも、明治という時代の空気を感じながら、お気に入りの浮世絵師を探してみてください。きっと素敵な作品に出会えますよ!

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山村 咲木

記者

ライター山村 咲木

愛知県・名古屋市出身。大学ではメディアプロデュースコースを専攻し、広告やデザインについて学びました。卒業後は一般企業に就職。その傍らで、ライターとして活動中。おいしいものに目がなく、グルメな記事を中心に執筆活動を行なっています。趣味は、イラストを描くこと、喫茶店巡りをすること、映画・ドラマ鑑賞、フラワーアレンジメントなど。料理をすることも好きで、休日には手料理を家族や友人に振る舞っています。