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動態保存されている国内最古のSL!「12号」が明治村を駆け抜ける勇姿に感動

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明治村ガイド 歴史

2023/08/29

動態保存されている国内最古のSL!「12号」が明治村を駆け抜ける勇姿に感動

安田淳

記者

ライター安田淳

明治5年(1872)、新橋・横浜間に日本初の鉄道が開業。令和4年(2022年)は鉄道開業150周年というメモリアルイヤーとなり、鉄道に関する多くのイベントが開催されました。
日本の鉄道史を語る上で、絶対に欠かすことができないのが「博物館 明治村」。かつて新橋・横浜間を走り、近代化の象徴となった蒸気機関車が現在も動く状態で保存されているのです。

 

日本鉄道史の幕開け

明治村に収蔵されている「錦絵 新橋汐留蒸気車鉄道局停車館之真図」(常設展示はなし)

新橋・横浜間に日本初の鉄道が開業したのは、明治5年(1872)10月14日。新橋駅で式典が催され、明治天皇らを乗せた「お召し列車」が横浜まで往復運転しました。翌日の10月15日には営業運行がはじまり、新橋・横浜間29kmの距離を約1時間で移動できるようになったのです。
当時の政府は鉄道の敷設をさらに推進し、明治の末ごろには北海道から九州まで鉄道が敷かれます。世界でもトップレベルの鉄道技術や鉄道網を有し、「鉄道大国」と称されることも多い現代の日本ですが、その礎は明治時代に築かれたと言えそうです。


さて、「新橋」「蒸気機関車」と聞いて、新橋駅前の「SL広場」を連想する人も多いのではないでしょうか?テレビの街頭インタビューや待ち合わせの場所としても有名ですね。

しかし、新橋駅前のSL広場に展示されている「C11形蒸気機関車」は昭和20年(1945)に造られた比較的新しいもの。鉄道開業当時の蒸気機関車ではありません。
しかも、引退するまで兵庫県の姫路機関区に配属されており、東京周辺を走行したことはないとのこと(!)「鉄道発祥の地」である新橋駅前に展示されているだけに、ちょっと勘違いしてしまいそうです。
では、鉄道開業当初、新橋・横浜間にはどのような蒸気機関車が走っていたのでしょうか。その答えは愛知県「博物館 明治村」にあります。

 

鉄道開業間もないころから歴史を見つめ続けた「12号」

「博物館明治村」は「名鉄岩倉変電所」や「鉄道局新橋工場」、「尾西鉄道蒸気機関車1号」、「鉄道寮新橋工場(機械館)」などを保存している、鉄道遺産の宝庫。明治時代のSLや京都市電に乗車できる体験も、楽しみのひとつとなっています。なかでも貴重なのが「SL12号」。

新橋・横浜間に鉄道が開業したのは明治5年(1872)ですが、その 2 年後に輸送量拡大のためイギリスから追加購入された車両です。国内最古の動態保存蒸気機関車として、150 年近い時を経た今もその雄姿を見ることができます。
昭和 60 年(1985)にボイラーの取替えが行われましたが、機関車は基本的に原型を保持。これは世界的に見てもとても貴重なことだそう。

ちなみに、使わなくなったオリジナルのボイラーは、SL東京駅から帝国ホテル中央玄関への坂を下ったところに保存展示されています。

現在は「12号」と呼ばれている蒸気機関車ですが、新橋・横浜間を走っていた時代の車両番号は「23」。明治42年(1909)の車両改番で「165」、明治44年(1911)に尾西鉄道(名古屋鉄道尾西線の前身)に払い下げられ「12」に変更されました。
尾西鉄道と名古屋鉄道が合併した後も、番号はそのまま引き継がれ、昭和32年(1957)まで愛知県内を走り続けていました。


明治村では「SL12号」とアメリカ製の「SL9号」の2両が交替で客車3両を牽引。多くの来村者に「明治時代の蒸気機関車に乗車する」という貴重な体験をもたらしてくれています。


しかし、「12号」は令和5年(2023)に149歳を迎える老体。入念なメンテナンスが必要です。令和元年(2019)9月から令和2年(2020)にかけて、静岡県にてオーバーホール(部品単位まで分解して清掃、再組み立てすること)を実施。このオーバーホールが終わり、運行再開を目指していた矢先に運転室下にある板バネの破損が見つかったのです。
オリジナルの設計図は残っておらず、新しい板バネの製造は困難を極めたそう。破損した板バネの形状や素材などを慎重に調査した末、なんとか新しい板バネを製造し「12号」に取り付けられました。


そして、鉄道開業150年の記念すべき、令和4年(2022)10月14日に試運転を開始!
そして明治村公式X(旧Twitter)内では「12号」の試運転や点火の様子を発信してきました。「#ワガハイの乗物メモ」のハッシュタグで、検索してみましょう。


試運転を重ねた「蒸気機関車12号(SL12号)」は、令和5年(2023)4月20日に、約3年8ヶ月ぶりに乗客を乗せた営業運行を再開。明治村に「12号」の雄々しい汽笛の音が再び戻ってきたのです。

 

SL乗車体験は明治村散策のハイライト


「12号」の復帰までは、明治村に動態展示されているもう一両の蒸気機関車「9号」が頑張ってくれていました。明治村でのSL乗車体験は楽しい思い出として心に刻まれるはずなので、来村したらぜひとも体験してみてくださいね!


「9号」は明治45年(1912)に米国ボールドウィン社で製造され、大正2年(1913)から富士身延鉄道(JR身延線の前身)の富士・大宮町(現・富士宮)間を走っていた車両。昭和48年(1973)に明治村に譲渡されました。


SLに牽引される客車は全部で3両で、すべてが100年以上の時を経た明治時代製造のもの。
特に、真ん中に連結される「ハフ11」は3両のなかで最も古い明治41年(1908)製で、日常的に走行しているものとしては国内最古の客車です。


3両編成となるとどうしても機関車に近い先頭と、後方を見渡せる最後尾が人気になってしまいますが、実は真ん中の車両が一番貴重というのはなかなか気づきにくい事実。来村前に覚えておくと、ちょっと自慢できそうです。

 

明治村にはそのほかにも鉄道遺産がいっぱい!

京都市電に乗車できる体験も人気。日本で初めて路面電車(市内電車)が開通したのは京都であった

名古屋電気鉄道(名古屋鉄道の前身)が大正元年(1912)に犬山線を開通した際に建てられた「岩倉変電所」

SLのほかにも鉄道に関する遺産がいっぱいの博物館 明治村。明治・大正期の建物が移築された村内をゆっくり走る、「京都市電」に揺られればタイムスリップしたような錯覚に陥ります。また、「岩倉変電所」など鉄道事業を影で支えた施設も興味深く、見ごたえあり。
「博物館 明治村」、実は鉄道ファンにもぜひ訪れてもらいたい、とっておきのスポットなのです。

INFORMATION

明治村 SL乗車体験

所在地

愛知県犬山市字内山1 博物館明治村内

運行時間

公式HPを確認

料金

【片道】大人700円・小学生500円【SL・市電一日券】大人1000円・小学生700円

公式サイトURL

https://www.meijimura.com/experience/sl%e4%b9%97%e8%bb%8a%e4%bd%93%e9%a8%93/

Writer

安田淳

記者

ライター安田淳

旅行やレジャー、グルメ、温泉を中心に様々なジャンルの記事を執筆し、編集もこなす名古屋在住のライター。日本全国を旅するのが最大の趣味で、旅先ではご当地のグルメや酒場、サウナ施設を求めアグレッシブに動く。
自称・スーパー銭湯研究家でもあり、サウナ・スパ健康アドバイザーの資格も所有。サウナ上がりの一杯を楽しみにしているため、移動は専ら公共交通機関である。