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「資生堂企業資料館」明治以降の日本女性美の変遷を辿る旅

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2022/07/05

「資生堂企業資料館」明治以降の日本女性美の変遷を辿る旅

メイジノオト編集部

記者

メイジノオト編集部

静岡県・掛川市にある「資生堂企業資料館」は、明治創業の資生堂の長い歴史の中で生み出された商品や、宣伝制作物をはじめとする資料の一部を公開している企業博物館です。

今回のメイジノオトでは、資生堂が日本初の民間洋風調剤薬局として創業した1872(明治5)年から今日までの歩みをご紹介していきます。

資生堂の創業

資生堂企業資料館 館内

まずはじめに資生堂についてご紹介します。

資生堂は、1872(明治5)年、日本初の民間洋風調剤薬局として、銀座の地に創業しました。創業当時から現在まで、一貫して美しいものを追求し続けており、1916(大正7)年に化粧品部を開業すると、社内に意匠部を開設。前田貢や山名文夫といった優れたデザイナーを輩出。

また、化粧品会社としての枠組みを超えた文化の発信をしており、レストランやギャラリー、独自の出版物を通して当時の最先端を人々に伝えるなど、その活動は多岐に渡ります。

画家を志していた資生堂の初代社長・福原信三氏は、アートとの結びつきがとりわけ強く、その美意識は今日の資生堂のクリエーションに脈々と受け継がれています。

明治以降の日本女性美の変遷を辿る!
「資生堂企業資料館」

東海道新幹線・掛川駅からほど近く、日本有数の化粧品メーカー資生堂の掛川工場の広大な敷地の一角に「資生堂企業資料館」はあります。

資生堂の歴史の中で生み出された商品やそのパッケー ジ、ポスターといった宣伝制作物をはじめとするさまざまな企業資料を収蔵。それらの宣伝制作物を通して、明治以降の日本女性美の変遷を辿ることのできる企業博物館です。

1階には、1872年(明治5)の創業から100年間の商品パッケージを時代を追いながら展示。2階は、1972年以降の商品をブランドごとに展示しています。

入り口を入ってすぐにある明治時代の銀座のミニチュア模型。人だかりのある建物が当時の「資生堂薬局」です。

資生堂のあゆみを知る

1階の資生堂のあゆみのコーナーでは、時代を象徴するテーマごとにまとめられており、香水や化粧品、ポスターなどが展示されています。

資生堂の洗練されたデザインは、初代社長・福原信三氏が創設した「意匠部」に集まったトップクリエイターたちによって手掛けられてきました。

創業初期に発売された商品をピックアップしてご紹介します。

日本初の練歯磨「福原衛生歯磨石鹸」

こちらは、化学遺産としても認定されている「福原衛生歯磨石鹸」。1888年(明治21)に発売された日本初の練歯磨です。

容器には、当時の資生堂の商標である「鷹」のマークが描かれています。

現在も愛されている「オイデルミン」

1897年(明治30)に、化粧品事業に進出するきっかけとなった資生堂初の化粧品「オイデルミン」。現在でも親しまれているロングセラー商品です。

美しい透明ボトルに入ったルビー色の化粧水は、当時の日本では大胆で非常にモダンなデザインでした。リニューアルを繰り返し、今なお愛され続けています。

個性美にはじめて着目した「着色福原粉白粉七種」

白色一辺倒であった「和化粧」から、「使う人の顔色に合わせて色味を調和させる」という個性美に着目した「着色福原粉白粉七種」。

大正のはじめに発売された7色展開の白粉は、お化粧の概念を変える革命的アイテムとなりました。日本人女性の肌色を研究し、使う人の肌色や生活シーンに応じて、自由に色を選べます。

100年前には既にこのような商品が発売され、日本人女性が使用していたとは驚きです。

先進的なヘアトニック「フローリン」

福原信三氏が、欧米留学の知識と経験を生かして開発したヘアトニック「フローリン」。楕円筒型の瓶や、椿の花をあしらいローマ字で文章を刷り込んだラベルは、西洋感覚にあふれるデザインです。

明治時代後半から流行した洋風の束髪の一種「ひさし髪」が大正時代には全国の女性に広がったため、一躍人気商品となりました。

このほかにも、意匠部が手掛けたさまざまな美しい商品や宣伝資料が時代ごとに展示されています。

ぜひじっくりと見てみてくださいね。

パッケージで辿る「資生堂」

1932年(昭和7)に発売された「モダンカラー粉白粉」。山名文夫が手掛けた戦前の資生堂デザインを代表する商品です。

1階、2階の「パッケージの変遷」の展示では資生堂初の化粧品「オイデルミン」から、大正時代の香水、昭和、平成の化粧品パッケージの変遷を辿ることができます。

その数は圧巻!創業時から引き継がれているデザインのものや、こんな商品もあった!と思わず懐かしくなる商品まで、見ているだけでもワクワクします。

資生堂にみる商業デザイン

資生堂企業資料館では、明治から現在までのポスターも多く展示されており、資生堂の歴史とともに、日本の近代商業デザインの歴史を辿ることができます。

明治・大正・昭和・平成を通し、資生堂が化粧品事業を発展させていく理念は、一貫して「より美しいものの追求」でした。

1916年に意匠部を開設すると、当時の日本の代表的なデザイナーたちによって、アール・ヌーヴォー、アール・デコの様式を取り入れながら、次第に「資生堂スタイル」を完成させていきます。

東京朝日新聞に載ったオイデルミンの広告。明治期の女性がオイデルミンを持っています。

婦人画報に掲載された「花つばき」の広告。

コートを羽織った女性の趣きある作品。

ポスターデザインやキャッチコピーをじっくりと見ているだけでもあっという間に時間が過ぎてしまいます。

こうして、振り返ってみると、明治から現在まで資生堂がいかに新しい女性のライフスタイルを総合的に提案してきたのかがわかります。

資生堂の歴史を語る上で欠かせないのが、戦前〜戦後を通じて、イラストレーションによる資生堂の広告制作の中心だった山名文夫氏の存在です。

晩年の作品。唐草文様を追求し続け、たどりついた唐草と女性美が融合された究極のイラストレーション。

山名氏の手によって、アール・ヌーヴォー、アール・デコを基調としたデザインが磨かれ、モダンで洗練された企業イメージをつくりあげていきました。そんな、山名氏の作品がここ資生堂資料館でも多く展示されています。

権利の関係上記事ではお見せできませんが、ほかにも、美しいポスター作品や資料が展示されていますよ。

オリジナルグッズも必見!

資生堂資料館では、企業文化資産である「資生堂デザイン」をモチーフに制作したトートバッグやあぶらとり紙、ポストカードなどここでしか手に入らないグッズが購入できます。

こちらも合わせてチェックしてみてくださいね。

【資生堂資料館】
住所  :静岡県掛川市下俣751-1
電話番号:0537-23-6122
開館時間:10:00-16:30(入館は16:00まで)
開館日 :金曜日のみ開館
夏季(8月中旬頃)/年末年始(12月中旬頃~1月初旬頃)

https://corp.shiseido.com/corporate-museum/jp/

隣接された「資生堂 アートハウス」へ行こう!

資生堂資料館と同敷地内には、1978年に開館した美術館「資生堂 アートハウス」も隣接。2002年(平成14)のリニューアルを機に、美術館としての機能を高め、近現代のすぐれた美術品を収集・保存すると共に、美術品展覧会を通じて一般公開しています。

現在、資生堂アートハウスでは、資生堂ギャラリーで開催している企画展や、芸術文化支援活動を通じて収集した美術品など約1,600点が収蔵。資生堂アートハウスの中心となるコレクションは、資生堂が文化芸術支援活動の一環として、東京・銀座の資生堂ギャラリーを会場に開催してきた「椿会美術展」や「現代工藝展」などに出品された絵画、彫刻、工芸品です。

企画展は年3〜4回開催しており、季節ごとに日本画・洋画・陶芸・漆芸などの工芸品、現代美術といった、さまざまな美術の世界を楽しめます。

建物自体がアート!

建物は、高宮眞介、谷口吉生両氏の設計によるもので、70年代を代表するモダニズム建築の傑作として、1979年度(昭和54年)の「日本建築学会賞(作品)」を受賞。建物自体がアートとしての価値を有しています。

最近だと、「ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館」や「GINZA SIX」を手掛けたことでも知られる谷口吉生氏が最初に手掛けた美術館建築としても知られています。

資生堂が提案する美しい生活のための展覧会
「第二次 工藝を我らに 第三回展」開催中!

資生堂 アートハウスの企画展は年3〜4回開催されており、現在は「第二次 工藝を我らに 第三回展 資生堂が提案する美しい生活のための展覧会」が開催されています。(2022年4月27日(水)〜8月12日(金))

「工藝を我らに」は、2015年からはじまった資生堂アートハウス主催のグループ展です。本年のメンバーは、十四代 今泉今右衛門(陶藝)、中條伊穗理(漆藝)、三代 𠮷羽與兵衛(金工)、安達征良(ガラス工藝)の4名。

本展では、文化によって生活を彩り、美しさによって暮らしを豊かにしたいと願う資生堂アートハウスの想いが込められています。

人生を彩るためのヒントを見つけに、アートハウスへ訪れてみてくださいね。

展覧会「第二次 工藝を我らに 第三回展」

会期:  2022年4月27日(水)〜 8月12日(金) <入場無料>
会場:  資生堂アートハウス(静岡県掛川市下俣751-1)

 

【資生堂アートハウス】
住所  :静岡県掛川市下俣751-1
電話番号:0537-23-6122
開館時間:10:00-16:30(入館は16:00まで)
休館日 :日・月・火曜日(祝日の場合も休館)夏季・年末年始・展示入れ替え期間
※変更になる場合がございます。
詳しくはHP、またはお電話にてご確認ください。

https://corp.shiseido.com/art-house/jp/

 

 

 

 

INFORMATION

資生堂資料館

住所

静岡県掛川市下俣751-1

開館時間

10:00-16:30(入館は16:00まで)

定休日

金曜日のみ開館 夏季(8月中旬頃)/年末年始(12月中旬頃~1月初旬頃)

電話番号

0537-23-6122

料金

無料

公式サイトURL

https://corp.shiseido.com/corporate-museum/jp/

Writer

メイジノオト編集部

記者

メイジノオト編集部

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