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【特別レポ】明治期の最高峰建築!豪華絢爛な国宝「迎賓館赤坂離宮」を見学してきました。

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建築

2023/03/07

【特別レポ】明治期の最高峰建築!豪華絢爛な国宝「迎賓館赤坂離宮」を見学してきました。

メイジノオト編集部

記者

メイジノオト編集部

世界各国からの賓客を迎える「迎賓館赤坂離宮」。日本の建築技術、美術工芸の総力を挙げてつくり上げられた明治時代を代表する建造物です。

2016年より通年で一般公開が開始され、新たな観光スポットとして人気を集めています。本館と庭園は、事前予約なし・当日受付でも参観可能です。
※本館の参観は、団体(20名以上)は事前予約が必要です。

今回は、本館、和風別館、庭園(主庭・前庭)の様子をご紹介します。

※通常は建物内部の撮影はNGです。今回は特別に許可をいただき撮影させていただいています。

迎賓館赤坂離宮とは?

「迎賓館赤坂離宮」は、明治42年に東宮御所(皇太子殿下のお住まい)として建設された日本では唯一のネオ・バロック様式による宮殿建築であり、設計は片山東熊氏が手がけています。

当時の日本の建築・美術・工芸界の総力を結集して建てられた建築物であり、明治期の本格的な近代洋風建築の到達点を示しています。現在では手に入らない素材が多く使われており、当時の担当業者によると「2,000億円をかけても同じような立派な建物はできない」とも言われている、類を見ない絢爛豪華な建物です。

現在は迎賓館として多くの国王、大統領、首相などをお迎えする場所として、また主要国首脳会議などの国際会議の場としても使用されています。平成21年に行われた大規模改修工事の後には、明治以降、昭和戦前に建設された我が国の建築を代表するものの一つとして、国宝に指定されています。

見学方法は?

「迎賓館赤坂離宮」の和風別館を見学するためには、事前のネット予約が必要です。
本館、庭園は事前予約なしで見学可能です。

※本館も団体(20名以上)での見学には事前予約が必要です。

※迎賓館HPの公開日程は、現時点で「○(公開)」となっている場合でも、国公賓等の接遇、その他迎賓館の運営上の都合により急遽「×(非公開)」に変わる場合がございます。 お出かけ前に必ず公開状況をご確認ください。

▼迎賓館HPはこちら
https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/

▼迎賓館公式X(旧Twitter)はこちら
https://twitter.com/cao_geihinkan

▼申し込みはこちらから
https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/visit/visit_fees/

迎賓館赤坂離宮の参観は、本館、和風別館、庭園と大きく3つに分かれています。

本館は、日本で唯一のネオ・バロック様式の宮殿建築物です。現在は、世界各国から国王、大統領、首相など海外からの賓客をお迎えし、接遇するための施設です。

和風別館は、賓客に和のおもてなしを提供するための施設です。
庭園は、本館・和風別館を囲むように造られており、豪華な噴水や花壇が設けられています。

迎賓館赤坂離宮本館 正面

正門から本館までの約220メートルを結ぶ「前庭」。ベルサイユ宮殿の前庭にならって、趣のあるピンコロ石(立法体の花崗岩)が敷き詰められています。

一般公開日には、前庭にキッチンカーとパラソル付きのテーブルが用意され、ヨーロッパ風の建物を眺めながら優雅なティータイムも楽しめます。

ネオ・バロック様式は、19世紀半ば、フランス・ナポレオン三世の第二帝政においてはじまったもの。左右対称の外観や、豪華絢爛な装飾が特徴です。建設当初から震災予防が考えられ、壁中の縦横に鉄骨を組み、床下には鉄材を使い耐震耐火構造としています。

実際に関東大震災にも耐え、100年以上経過した現在でも、威風堂々とした姿を保っています。

「迎賓館赤坂離宮」では、西洋建築の様式の中に日本の要素が散りばめられています。正面玄関の鉄扉の上部に菊花、扉左右に桐の紋章が配されています。

和と洋が織りなす対比の美しさも大きなみどころのひとつです。

前庭から本館の屋根を見上げると、甲冑を付けた武者が睨みをきかせています。

正面玄関ホール

出典:内閣府迎賓館ウェブサイト

白くうつくしい壁と目にも鮮やかな真紅の絨毯が印象的な、正面玄関ホール。床の市松模様は、白い部分にイタリアを代表する大理石“ビアンコ・カララ”、黒い部分には宮城県産の“玄昌石”が使われています。

正面玄関ホールは、迎賓館赤坂離宮を訪れる賓客が、最初に足を踏み入れる場所です。天皇陛下や総理大臣と最初に対面する場所でもあります。

中央階段

こちらは中央階段。賓客は、本館中央に位置する階段を上がり、2階へと向かいます。中央階段の左右の壁には赤い大理石“ルージュ・ド・フランス”が張り込まれています。

階段上の欄干には朝日の絵が描かれています。中央階段を上ってくる賓客を朝日で出迎える演出になっています。

こちらは賓客が帰られるときの景色です。階段を上るときに見える朝日と対になる夕日が描かれています。夕日とともにお見送りする演出になっています。

写真手前の2本の柱はブレッシュ・ビオレットという大理石、写真奥の2本の柱がスタッコです。

大ホールから中央廊下にかけて、紫斑紋の大理石の柱が並んでいます。一見ほかの大理石の柱と同じように見えますが、スタッコと呼ばれる模造大理石を使用しています。

創建当時は、高い技術力を示すものとして用いられていたようです。

重厚な雰囲気の「花鳥の間」

迎賓館赤坂離宮で、重厚な雰囲気の「花鳥の間」。部屋の名前は、天井に描かれた油絵や壁に飾られた七宝焼が、花や鳥を題材にしていることに由来しています。 かつては「饗宴の間」と呼ばれ、現在では海外からの賓客を招いて晩餐会や記者会見の場として使用されています。

16世紀後半のフランスで流行したアンリ2世様式でつくられています。

みどころポイント① 四季折々の花や鳥を描いた七宝焼

花鳥の間では、壁面全体を茶褐色のシオジ材で板張りし、重厚な雰囲気を醸しだしています。板壁には、四季折々の花や鳥を描いた楕円形の七宝焼の額が30枚飾られています。

この七宝焼は、明治を代表する日本画の巨匠・渡辺省亭(わたなべ せいてい)が下絵を描、七宝焼きの天才といわれた涛川惣助(なみかわ そうすけ)が焼いたもの。

トサカや羽根のボリュームある質感、息づかいを感じるような眼の動きなど、どれも息をのむものばかり。七宝の最高傑作と謳われています。

みどころポイント② 晩餐の席を飾るにふさわしい天井画

晩餐の席を飾るにふさわしい天井画。フランス人画家が描いたもので、油彩画24枚と金箔地に模様を描いた絵12枚が張り込まれています。

七宝焼と比べることで、日本と西洋の花鳥の描き方の違いを感じられます。

今でこそ、大変うつくしい花鳥の間ですが、戦後は国立国会図書館としても使われ、喫煙もされていたため、ひどい損傷状態だったのだそう。昭和の改修の際に洗浄研磨によってかつてのうつくしさを取り戻しました。

霊鳥が見守る「彩鸞の間」

出典:内閣府迎賓館ウェブサイト

「彩鸞の間」は、迎賓館の正面玄関の真上の部屋で、「朝日の間」と相対し、創建時は第二客室と呼ばれていました。現在は、晩餐会会場の控えの間として、また条約の調印式や首脳会談などが行われている場所です。

装飾は19世紀初頭ナポレオン一世の時代にフランスで流行したアンピール様式。軍隊調のモティーフを数多く取り入れた、壮大で古典的格調漂う作風が特徴です。

みどころポイント① 黄金の霊鳥

壁のレリーフには、翼を広げた華麗な鳥の彫刻が飾られています。これは「鸞(らん)」と呼ばれる霊鳥の一種で、部屋の名前の由来になっています。

みどころポイント② 華麗な金箔張りレリーフ

金箔張りレリーフは、鎧武者や冑などの和の要素も取り入れられています。マントルピースの装飾には和洋の刀剣のレリーフが見られます。

迎賓館赤坂離宮で最も格式の高い「朝日の間」

出典:内閣府迎賓館ウェブサイト

創建時は「第一客室」と呼ばれていた「朝日の間」。ヨーロッパの宮殿でいう、王が訪問者と会うための「謁見の間」に当たります。

現在は、賓客のサロン(客間・応接室)として使われ、表敬訪問や首脳会談等も行われる迎賓館で最も格式の高い部屋です。

みどろこ① 女神オーロラの天井画

朝日の間の由来にもなった天井画は、フランス人画家が描いたもの。朝日を背にした暁の女神オーロラが、左手に月桂樹の小枝を、右手には四頭の白馬の手綱を持ち、颯爽とチャリオット(香車)で天空を駆けている姿が描かれています。

みどろこ② 47種類の紫色の糸を使用した絨毯

出典:内閣府迎賓館ウェブサイト

床に敷かれた敷物「緞通(だんつう)」の花の模様は、天井に描かれた桜がひらひらと舞い落ちた様子を表現。この微妙な色調の変化をつけるために、47種類の紫色の糸が用いられています。この糸の使い分けが、日本風の繊細なぼかしを表現し、部屋全体に落ち着いた雰囲気と格調を醸しだしています。

華やかな舞踏室「羽衣の間」

かつては舞踏室と呼ばれていた「羽衣の間」。

天井には部屋の名前の由来となった謡曲『羽衣』の一節「虚空に花ふり音楽聞え、霊香四方に薫ず」を描いた雄大な絵画があります。羽衣の間は、雨天時の歓迎式典や晩餐会の招待客に食前酒が供されるところでもあります。

みどころポイント① 壁面のレリーフ

室内には、西洋風の仮面やヴァイオリンなどの洋楽器、琵琶や鼓などの和楽器などのレリーフといった、和洋の音楽に関するモティーフが散りばめられています。

みどころポイント② 館内最大級のシャンデリア

部屋を照らす3基のシャンデリアは、クリスタルガラスを主体に約7,000個ものパーツを組み合わせており、館内で最も豪華なもの。輝く装飾の中には、洋風の仮面や楽器など、舞踏室にふさわしいモティーフが散りばめられています。

室内には、皇室の方々も演奏されたエラールピアノが置かれています。このピアノは、日本に数台しかない大変貴重なもので、通常ピアノの鍵盤は88鍵ですが、このピアノは90鍵ある珍しいピアノです。

純日本のおもてなしを感じる「和風別館」

和風別館「游心亭」は、東宮御所などの設計で知られる建築家、谷口吉郎氏の設計により昭和49年に建設された建物です。

迎賓館本館で執り行われる行事や接遇が洋式であるのに対し、和風の意匠と純日本のおもてなしで諸外国の賓客をお迎えするための施設として利用されています。

みどころポイント① 正面玄関と渡り廊の坪庭

玄関から続く渡り廊下の右手にある坪庭。孟宗竹が植栽され、京都白川産の小砂利が敷き詰められ、中央には同じく京都産の貴船石が3個配置されています。

みどころポイント② 天井に映る「ゆらぎ」

池に太陽の光が差し込むと、天井に水の「ゆらぎ」が投影され、日本的な趣が演出されます。太陽の角度が低い冬は、より綺麗にゆらぎが映り、角度によっては七色のゆらぎを見ることもできます。
この日は幸運なことにとても綺麗なゆらぎが見られました。

みどころポイント③ お茶のおもてなし

茶室奥の床の間には、大徳寺管長の揮毫による掛け軸がかけられています。その前に四畳半の畳席があり、お茶をたてるところを賓客が観賞したり、お茶の接待を受けられたりします。

和風別館へ向かう途中には、エリザベス英国女王が植樹されたイングリッシュオークも見られます。他にも、主庭にはフォード・米国大統領やゴルバチョフ・ソ連邦大統領など、歴史に名を残した人物の記念植樹も植えられていますよ。

国宝に指定された噴水のある「主庭」

本館の南側にはうつくしい主庭が広がり、中央には大きな噴水池が設けられています。

左右対称を特徴とした西欧式でありながらも、玉砂利が敷き詰められ、いたるところに松の木が植えられるなど、和の要素を取り入れたつくりが見られます。

中段の水盤の上にはシャチの銅像があり、その下段の縁石を亀とグリフォンが囲んでいます。グリフォンとは、上半身が鷲で下半身がライオン、そして背中に大きな翼を持つギリシャ神話に登場する伝説上の生物です。

この大噴水越しに本館を撮影するのが人気で、訪れる人が立ち止まって撮影する姿が多く見られました。

明治村とのつながり

明治村にある赤坂離宮正門哨舎

現在の哨舎

最後に、明治村と迎賓館赤坂離宮のつながりをご紹介します。実は、明治村内には、赤坂離宮の正門で警護のために使用された「赤坂離宮正門哨舎」が移築されています。

哨舎は木造銅板葺き、八角形の平面で、洋風の正門にあわせて白壁に丸屋根、頂上に飾りをのせたデザインです。

▼赤坂離宮正門哨舎
https://www.meijimura.com/sight/%E8%B5%A4%E5%9D%82%E9%9B%A2%E5%AE%AE%E6%AD%A3%E9%96%80%E5%93%A8%E8%88%8E/

また、​​明治村内では迎賓館赤坂離宮創建当初の家具を数多く所蔵しています。創建当初に撮影された写真とともに、華麗な家具をお楽しみください。

日本の建築、美術、工芸界の総力を結集した明治期の近代洋風建築の頂点ともいえる「迎賓館赤坂離宮」。賓客の接遇に支障がない範囲で通年で一般参観を行っているので、ぜひ一度訪れてみてください。

 

INFORMATION

迎賓館赤坂離宮

所在地

東京都港区元赤坂2-1-1

営業時間

HPをご確認ください。

定休日

HPをご確認ください。

電話番号

03-5728-7788(テレフォンサービス)

公式サイトURL

https://www.geihinkan.go.jp/akasaka/

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メイジノオト編集部

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