つみきからできた帝国ホテル?

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2023/06/13

つみきからできた帝国ホテル?

6,000ピースもの「つみき」でつくり上げられた「帝国ホテル中央玄関」は、「つみきひろばGabe」のシンボル的存在です。

明治村に移築保存されている旧帝国ホテル(ライト館)の設計者として知られる建築界の巨匠
フランク・ロイド・ライト(1867-1959)は、どのように建築家としてのセンスや想像力が培われたので
しょうか?

1966年米国で印刷されたフランク・ロイド・ライトの肖像画郵便切手

近代建築の巨匠として知られるライトですが、彼が建築家になったのは母親の影響が大きかった
ようです。教育熱心だったライトの母アンナは、ライトが生まれる前から彼を建築家に育て上げた
いと、19世紀ドイツの教育者フレードリッヒ・フレーベルが考案した世界初の教育遊具「恩物(≒つ
みき)」を使って彼の感性を伸ばそうと考えていました。

ライト自身、幼少期に「恩物(つみき)」で遊んだことが、建築作品に影響を与えたと述べていま
す。このことからも、天才と呼ばれたライトの豊かな感性を育むのに「恩物」や「つみき」が刺激を
与える遊びのひとつだったことが感じられます。

フランク・ロイド・ライト「つみき」

1960年代の恩物(画像提供/株式会社フレーベル館)

現在の恩物恩物(画像提供/株式会社フレーベル館)

明治村の子育ち施設「つみきひろばGabe(ガーベ)〜フレーベルからのおくりもの〜」の「Gabe
(ガーベ)」とは、日本語では「恩物」と訳されています。
子どもたちが楽しく遊びながら学べるよう19世紀ドイツの教育者フレーベルによって生み出された
世界初の教育遊具のことをいいます。簡単にいうとおもちゃのはじまりです。
この恩物のひとつが、今もおもちゃとして定番の「つみき」の原型となるものでした。

幼少期から「つみき」や「恩物」で遊ぶことに夢中だったライトは、
「つみきを組み合わせたら、どんな形でもつくり出せる。」と気が付きます。
四角や三角、長方形……単純な形だけれど、少年時代のライトの見る世界は、人とは違うものでした。
「恩物」に触れる中で、「立体」「面」「線」「点」を分解したり組み合わせたりする遊びを通じて、
この世界をかたちづくる構造や法則を直感的に理解できたり、「いろ」「かず」「かたち」の感覚も
養われていったのかもしれません。

ライトの生涯から学ばされるのは、子どもの気付きや疑問がどれほど未来に働きかけるのか、ということ。
子どもたちの何気なく発する疑問やアイデア、創造性にも、私たち大人が耳を傾けて寄り添い、
時には声をかけて導いてあげたいですね。

「つみきひろばGabe」に用意された「つみき」の特徴は?

「つみきひろばGabe(ガーベ)」に用意されている「つみき」やフレーベルの「恩物」の一番の特徴
は、高い加工技術により正確な寸法で作られていることや、角が残されていること。
子どもたちが安心して遊べるよう、トゲなどはしっかりと処理がされ、さらさらすべすべの手触りは心地よく自然の木のぬくもりを感じられます。

正確な寸法であることや角が残されていることで、形や大きさの違う「つみき」同士を思いのままに積み上げていってもどこかで必ず高さが合ったり、積んだときにぴったりくる一致感は、子どもたちの創作意欲をますますくすぐります。





二番目の特徴は、白木のままでカラーリングがされていないこと。色がついていないからこそ、
何色にでも自由に想像し、思いのままに遊びをふくらませていくことができます。


そんな「つみき」が、「つみきひろばGabe」には、さまざまな形と大きさで10,000ピース以上も用意
されています。大量のつみきに何ができるか考えるだけでもワクワクしますね。

遊び方は、自由!


小さな赤ちゃんは、木の感触を楽しんだり、カチカチと合わせてどんな音がするのか確認したりと、
はじめての経験に夢中で遊んでくれるはずです。

そして、成長とともに並べ、積み、形をつくりはじめ、人や動物に見立てたり、おうちや建物、道、トンネル、街、山……と、子どもたちが成長とともに日常の中で知る「もの」が増えるほど、表現できる「もの」もどんどん増えていきます。遊びの中で、こんなこと知っていたの?と驚かされることも。


少しヒントを与えるだけで、面白いくらいアイデアがあふれ目を輝かせている光景。
親としては、見ていてとてもうれしい瞬間です。


ただ、子どもは本来「自分でやりたい!」もの。
つい手を出したくなる気持ちをぐっと押さえて見守ることも大切です。
せっかくの想像力が育まれるチャンスを阻まないようにしたいですね。
集中できるよう、危ないからと注意しなくてもいいような環境を与えることも保護者の役目かもしれませ
ん。


たくさん遊んだ子と遊んでない子の違いは、大人になってあらわれてくることがあるそうです。
何か困ったことがあった時、どうすればいいかすぐ人に聞く、聞かなければ行動できないのか、
それとも最後まで自分で考えて答えを導き出すのか。

親になると経験から子どもたちに、つい失敗しないように言葉をかけたくなってしまうものですが、自分でやりたいと思わせる環境を提供し、見守っていくことも重要かもしれません。

ライトの幼少期もまた、好きなことに熱中し、ほかの子が考えつかないような自由な発想で考え、
遊ぶことができる環境があったからこそ、名建築家になりえたのかもしれませんね。


2022年6月21日、博物館明治村内にオープンした「つみきひろばGabe〜フレーベルからのおくり
もの〜」では、10,000ピース以上の「つみき」や世界初の教育遊具「恩物」などで、
自由に子どもたちが遊ぶことができます。
目を輝かせ夢中で遊ぶ子どもの新たな成長の瞬間をぜひ見つけてあげてくださいね。

施設情報は、下記リンク同様
https://www.meijimura.com/meiji-note/post/gabe-open/

INFORMATION

つみきひろばGabe~フレーベルからのおくりもの~

所在地

愛知県犬山市字内山1番地

営業時間

月毎に変更します。詳細はHPでご確認ください。

定休日

火曜・水曜・木曜(祝日は除く)

電話番号

0568-67-0314

料金(時間制)

最初の30分…子ども700円(500円)、大人300円(200円)※()は会員料金

料金(フリー)

平日1DAYフリー・土休日3時間…1,500円(1,200円)※()は会員料金

公式サイトURL

https://www.meijimura.com/experience/gabe/

Writer

安井弥生

記者

フォトグラファー安井弥生

1978年愛知県生まれ。名古屋市在住のフォトグラファー。デザイン事務所、百貨店内写真室での勤務を経て、2017年よりフリーランス。企業や病院、雑誌やWEB用の人物や料理、商品などの撮影をしています。企業やフォトスクール、市民講座などでの講師経験もあり。一児の母。
趣味は旅行と読書。とくに東南アジアが好きで、愛読書は、沢木 耕太郎の「深夜特急」や小林 紀晴の「アジアン・ジャパニーズ」など。