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【レポート】帝国ホテル二代目本館100周年記念。「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」|豊田市美術館

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おでかけ 建築

2023/11/12

【レポート】帝国ホテル二代目本館100周年記念。「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」|豊田市美術館

アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867-1959)による代表作のひとつ、帝国ホテル二代目本館(通称「ライト館」)の完成から今年で100年目を迎えます。

エイヴリー建築美術図書館の全面的な協力のもと、約30年ぶりとなる本格的な回顧展「フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築」が、愛知県豊田市にある豊田市美術館にて開催中です。

今回は、特別に撮影させていただいた写真とともに、レポートしていきたいと思います。

※撮影NG

 

およそ30年ぶりとなる本格的な回顧

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867-1959)。「落水荘(カウフマン邸)」や「グッゲンハイム美術館」で知られるライトは、「帝国ホテル二代目本館」や「自由学園明日館」「山邑太郎左衛門邸(現ヨドコウ迎賓館)」を手がけ、また熱烈な浮世絵愛好家としての顔も持つ、日本とゆかりの深い建築家です。

2012年には、5万点以上におよぶ図面他資料がフランク・ロイド・ライト財団からニューヨーク近代美術館と、コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管され、学術調査研究が進められてきました。

その成果は、建築にはじまり、芸術・デザイン・著述・造園・教育・技術 革新・都市計画に至るライトの広範な視野と知性を浮き彫りにしています。

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

会場は「モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観」「『輝ける眉』からの眺望」「進歩主義教育の環境をつくる」「交差する世界に建つ帝国ホテル」「ミクロ/マクロのダイナミックな振幅」「上昇する建築と環境の向上」「多様な文化との邂逅」の全7章+αで構成。

ライトのキャリアを振り返りながら、アメリカ中西部からラテンアメリカ、ヨーロッパ、日本まで、ライトが経験したさまざまな風土と文化が取り入れられたことがわかる、建築ドローイングや図面の数々が展示されています。

3つの見どころポイント

フランク・ロイド・ライト《帝国ホテル二代目本館(東京、日比谷)第2案、1915年 横断面図》コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ所蔵 ©The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

① 日本初公開、フランク・ロイド・ライトによる精緻で華麗なドローイング

ライトは浮世絵との出会いに触発されて、それまで規範とされてきたボザール様式の建築図面とは異なる新しい図面の描き方を考案しました。

建築が実現する前に自分の頭のなかで建物を建てていたといわれるライトのドローイングは、ときとして実現された建築以上にライトの思想を直接的に物語っています。

② 帝国ホテル二代目本館の模型を3Dプリントレプリカで公開

 帝国ホテル二代目本館に関する貴重な資料の中に石膏模型があります。ライトが帰国の際に、親交のあった建築家の武田五一(1872年〜1938年)へ贈ったものです。現在は京都大学に建築教育資料として所蔵されています。

本展での展示も検討されていましたが、石膏が状態変化しており、巡回させることは困難と判断されました。そこで、武田五一氏ゆかりの京都大学と京都工芸繊維大学が連携し、京都工芸繊維大学KYOTO Design Labの最新の技術力によって、原作の90%の縮尺の3Dプリントレプリカが制作されました。

会場では迫力満点の3Dプリントレプリカを間近で見られます。

 ③ ライト建築を体験!ユーソニアン住宅の原寸モデル

「ユーソニアン住宅」は、中流階級のためにライトが考案した比較的安価な小規模住宅です。ライトが主宰していた「タリアセン・フェローシップ」という実践教育の場で学んでいた磯矢亮介氏の協力のもと、ライトが提言していた「ユーソニアン住宅」の一部が会場内で再現されています。

ライトの建築の空間スケールを実際に体験できますよ!

 

各章の見どころポイント

第1章 モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

ここからは各章のポイントをご紹介していきます。

「モダン誕生 シカゴ―東京、浮世絵的世界観」では、ライトが建築家としてのキャリアをスタートしたシカゴ時代、ライトと日本の関わりについて触れています。

1893年のシカゴ万博では、日本のパヴィリオン「鳳凰殿」を知り、日本文化に関心を持ったライト。

1905年には、日本を初訪問。7週間の旅行中には、愛知へも訪れており、「東本願寺名古屋別院 本堂」を写した写真も残されています。

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

他にも、浮世絵に着想を得て考案した新しい建築ドローイング、初の公共建築ユニティ・テンプルの100年前の模型、ライトが手がけた展覧会デザインなど、初期の貴重な取り組みを紹介しています。

第2章 「輝ける眉」からの眺望

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

第2章では、プレイリー・スタイルの代表的住宅として「クーンリー邸」「ロビー邸」、また日本での作品「山邑邸(現・ヨドコウ迎賓館)」「小田原ホテル計画案」などを紹介しています。

ライトが設計をする上で大切にしたのは「有機的」であること。環境や気候に適した、人の生活を豊かにする建築でした。屋根を低く抑え、水平ラインを意識したデザインをライトはプレイリー・スタイル(草原様式)と呼びました。

深い軒と水平的な広がりをもつ住宅は、外部と内部が有機的につながるライトならではの建築です。さらには日本の変化に富んだ地形、山や滝のある風景、日本の植物との出会いもライトの創造力を刺激し、やがて代表作「落水荘」へと結実します。

フランク・ロイド・ライト《『リバティー』誌のための表紙デザイン案 柱サボテンとサボテンの花》1927-28年 米国議会図書館版画写真部蔵 Photo: Library of Congress,LC-DIG-ppmsca-84873

また、ライトの自邸兼スタジオの名前である「輝ける眉(タリアセン)」とはライトの祖先が話したウェールズ語で、丘を顔の額に、建物を眉に例えています。

第3章 進歩主義教育の環境をつくる

クーンリー・プレイハウス幼稚園の窓ガラス/豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

ライトと教育には深いつながりがあります。第3章では、「クーンリー・プレイハウス幼稚園」のためのドローイングと実際に使用されたステンドクラスや家具のほか、今につづく「自由学園」の図面や模型、また同学校の教育資料を紹介しています。

第4章 交差する世界に建つ帝国ホテル

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

第4章では、ライトが手がけた「2代目帝国ホテル本館」の図面やドローイング、実際に使われていた家具のほか、記録写真や パンフレットなど、当時の新しい文化としてのホテルの姿も紹介しています。

また、帝国ホテルと同時期に設計された「ミッドウェイ・ガーデンズ」のドローイングも展示し、共鳴し合う二つの設計を通して、ライト建築の特徴を明らかにしています。

 

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

実際に使われていた大谷石やテラコッタも展示されています。/豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

広大な敷地にさまざまな付帯施設を備えた帝国ホテルの建設は、都市計画にも似たメガ・プロ ジェクトでした。ライトが、建物だけでなく、家具・食器など総合的にデザインに携わったのも注目すべき点です。

明治村内では、帝国ホテル中央玄関が残されているので、展示を見て気になった方は合わせて足を運んでみてくださいね。

▼詳しくはこちら

https://www.meijimura.com/sight/%E5%B8%9D%E5%9B%BD%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E7%8E%84%E9%96%A2/

第5章 ミクロ/マクロのダイナミックな振幅

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

第5章では、ライトが生涯にわたって抱いたコンクリートへの関心と、ユニバーサルな建築システムの探求、またそのシステムを用いた住宅を紹介しています。また、ライトはまた素材についても強い関心をもち、地域に根ざした材料を用いる一方で、コンクリートの持つ一体性に着目することで、グッゲンハイム美術館のような巨大建築も実現しました。

会場では、ユーソニアン住宅の原寸モデルを展示し、実際の空間を体験できます。貴重な機会ですので、ぜひ中へ入ったり、椅子に座ってライトの建築を感じてみてください。

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

また、ライトは幼少期に母親から受けたフレーベル教育での、「恩物」での遊びが建築の発想の根幹になっていると自身も回顧しています。

明治村にはライトも遊んだ恩物で実際に遊べる「つみきひろばGabe〜フレーベルからのおくりもの〜」もあるので、ぜひチェックしてみてくださいね。

▼詳しくはこちら

https://www.meijimura.com/meiji-note/post/gabe-open/

第6章 上昇する建築と環境の向上

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

フランク・ロイド・ライト《ジョンソン・ワックス 本部棟 中央執務室の椅子》1936年頃 豊田市美術館蔵

水平ラインを意識したプレイリー・スタイルで知られるライトですが、その一方で垂直方向・高層建築にも早い段階から関心を示していました。

第6章では、ジョンソン・ワックス・ビルをはじめとする高さへのライトのあくなき挑戦、ライトが考えた美しいオフィス空間も紹介しています。

高層ビルの設計に取り組むライトの映像も必見です!

第7章 多様な文化との邂逅

フランク・ロイド・ライト
《大バグダッド計画案(イラク、バグダッド)1957年 鳥瞰透視図 北から文化センターと大学をのぞむ》コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴズ蔵
The Frank Lloyd Wright Foundation Archives (The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library, Columbia University, New York)

第7章ではライトとアメリカ国外の作家たちの交流を取り上げると共に、重要なインスピレーション源としてのイタリアに注目しています。

また、非西洋への眼差しとして、アメリカ先住民文化を取り入れた「ナコマ・カントリー・クラブ計画案 」ヴェネツィアの運河沿いに計画した「マシエリ記念学生会館」、イスラム文化との出会いから生まれた美しい都市像、「大バグダッド計画」も紹介。

そして最後は、田園地帯に広がる生活と労働のラディカルな再構築であるブロードエーカー・シティ構想をCGアニメーションで表現したスペインのロメロ氏の作品で幕を閉じます。

豊田市美術館プレス内覧会撮影風景

今回は、約30年ぶりとなる大規模な回顧展「フランク・ロイド・ライト「世界を結ぶ建築」のご紹介でした。

ライトが考えた美しい建築の数々、帝国ホテルの貴重な資料や知られざるエピソード、秘蔵写真も多く展示されています。

ぜひこの機会に豊田市美術館へ行ってみてくださいね。また、展覧会と合わせてぜひ明治村へもお越しください。

 

開催概要

会期:2023年10月21日(土)〜12月24日(日)
会場:豊田市美術館
住所:愛知県豊田市小坂本町8-5-1
主催:豊田市美術館、フランク・ロイド・ライト財団
共催:中日新聞社
特別協力:コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館、株式会社帝国ホテル
助成:公益財団法人ユニオン造形文化財団
展示協力:有限責任事業組合 森の製材リソラ
後援:アメリカ大使館、一般社団法人日本建築学会、公益社団法人日本建築家協会、 一般社団法人DOCOMOMO Japan、有機的建築アーカイブ

観覧料:一般:1,400円[1,200円]/高校・大学生: 1,000円[800円]/中学生以下無料
*[ ]内は前売券及び20名以上の団体料金及びオンラインチケットの料金となります。
*高校・大学生は、学生証をご提示ください。
*その他、観覧料の減免対象者及び割引等については、当館ウェブサイトをご確認ください。
*お得な年間パスポートの詳細はこちらから
https://www.museum.toyota.aichi.jp/visit/tomonokai.html
*オンラインチケットの購入はこちらから
https://www.asoview.com/channel/ticket/gBwBO5O8Q6/ticket0000023055

会期中、一部展示替えを行います。
前期11月19日[日]まで/後期11月21日[火]から

監修者: ケン・タダシ・オオシマ氏(ワシントン大学建築学部教授 )
特別アドヴァイザー: ジェニファー・グレイ氏(フランク・ロイド・ライト財団副代表、タリアセン・インスティテュート・ディレクター)

INFORMATION

豊田市美術館

所在地

愛知県豊田市小坂本町8-5-1

営業時間

10:00~17:30

定休日

毎週月曜日(祝日は除く)、年末・年始2023.12.28(木)-2024.01.04(木)

電話番号

0565-34-6610

公式サイトURL

https://www.museum.toyota.aichi.jp/

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メイジノオト編集部

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