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多くの謎に包まれた「蒲郡クラシックホテル」90年の歴史に迫る!

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2023/08/01

多くの謎に包まれた「蒲郡クラシックホテル」90年の歴史に迫る!

メイジノオト編集部

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メイジノオト編集部

日本のホテル黎明期に創業し、戦前・戦後を通して西洋のホテルのライフスタイルを具現化してきたクラシックホテル。全国に9つの加盟ホテルがある「日本クラシックホテルの会」、その一つ「蒲郡クラシックホテル」が、愛知県蒲郡市にあります。

広報の山本さんによると蒲郡クラシックホテルは、戦争、災害、経営難による市への売却による7年の空白期間などによって、過去を知る手掛かりがあまり残されておらず、わからないことが多いのだそう。

そこで今回は、時代を超えて愛されてきた「蒲郡クラシックホテル」について迫ります。


「蒲郡クラシックホテル」は、1912年(明治45年)創業の料理旅館「常磐館」の別館として、1934年(昭和9年)に建てられた城郭風建築のホテルです。

風光明媚な三河湾を望む開放的な立地にあり、東名高速道路音羽蒲郡I.C.から三河湾オレンジロードで11km(約15分)、蒲郡駅からタクシーで5分ほどの場所にあります。

名だたる文豪たちに愛された
「蒲郡クラシックホテル」

株式会社タキヒヨーの5代目・滝信四郎氏之像(海辺の文学記念館)

「蒲郡クラシックホテル」の歴史は、明治時代に遡ります。もともとは、竹島周辺の観光開発を進めた名古屋の織物商社である株式会社タキヒヨー5代目・滝信四郎氏が1912年(明治45年)に創業した和風の料理旅館です。

執筆をされた様子を再現した和室(海辺の文学記念館)

全国的にあまり知られていなかった蒲郡市沖の三河湾にある無人島「竹島」の地を多くの方に知ってもらうために、滝氏が考え出した手法が、現代でいうタイアップです。

当時の人気作家に無料で何カ月も宿泊してもらう代わりに、作品に蒲郡や常磐館を登場させてもらうように呼びかけました。

その後、蒲郡を愛する文豪たちの逗留地となり、小説を通して蒲郡・竹島・常磐館は全国に知れ渡ることになりました。

ノーベル文学賞を受賞した「川端康成氏」をはじめ、蒲郡市出身の直木賞受賞作家 「宮城谷昌光氏」や芥川賞受賞作家「平野啓一郎氏」の作品なども展示されています。(海辺の文学記念館

旧蒲郡ホテル「聚美堂(現 六角堂)」の軒下にかけられていた「十二支透彫額(じゅうにしすかしぼりがく)」(海辺の文学記念館)

「常磐館」は残念ながら1982(昭和57)年に取り壊されてしまいましたが、跡地に「海辺の文学記念館」が建てられました。館内には「常磐館」で実際に使われていた照明器具や、置時計などが飾られ、落ち着いた雰囲気を醸しだしています。

<蒲郡、竹島、常磐館が扱われた作品の一部>

菊池寛「火華」、志賀直哉「内村鑑三先生の憶ひ出」、川端康成「驢馬に乗る妻」「旅への誘い」、三島由紀夫「宴の後」、池波正太郎「よい匂いのする一夜」、井上靖「ある落日」、谷崎潤一郎「細雪」など、他多数。

 

外国人を誘致するために建てられた
国際観光ホテル

現存している「蒲郡クラシックホテル」が開業したのは1934(昭和9)年のこと。「蒲郡ホテル」「蒲郡プリンスホテル」そして「蒲郡クラシックホテル」と名前が変わったものの、建物自体はほぼ当時のまま残されています。

当時の鉄道省国際観光局は外国人誘致のため、外国人向けホテルの建設に乗り出しており、 第1回 国際観光ホテルに指定されました。

建設費は40万円。当時の蒲郡町の年間財政が約18万円ということからも、巨額の費用を投じて建てられたことがわかります。

ホテルの外観は名古屋城の天守閣をイメージした華麗な城郭風建築、内装と調度品はクラシカルで知的なアールデコ様式が残されており、部屋からは竹島と三河湾が見渡せます。

外国人旅行者に注目されるように、外観を城郭風にしたのだそう。戦前に建てられた価値のあるホテルとして、2022年には国の登録有形文化財に指定されています。

それでは、ここからはホテル内をみていきましょう!

創業当時の趣が色濃く残るアールデコ様式で統一された「フロント・ロビー」。

奥には暖炉の周りを囲うマントルピースが見えます。

天井を見上げるとシャンデリアと漆喰によるレリーフも圧巻です。

エレベーターの階数表示も開業当時のもの。

昭和天皇皇后陛下、ベーブ・ルースなどの著名人も宿泊したロイヤルスイートルーム。蒲郡ホテル時代の雰囲気を感じられる客室です。

3方向に窓があるため、バルコニーへ出ることも。目の前には竹島が広がります。

こちらの写真は、一番上の展望台からの写真です。現在は展望台の営業はしていませんが、当時は、展望台にのぼることができたようです。

展望台から眺める竹島は、絶景です。

ホテル内には建設当時の面影がたくさんありますが、ステンドグラスもその一つ。パステルのやわらかい光のステンドグラスはとても素敵です。

ステンドグラスは3階に向かう階段にあるので、見たい方はエレベーターではなく階段を使いましょう。

当時の面影を感じる格式高いメインダイニングルーム。創業当初の1930年代にタイムスリップしたかのような雰囲気が感じられます。

蒲郡クラシックホテルの2階にあるバーラウンジ「アゼリア」。昼間は、ティーラウンジになっているので、カフェ利用も可能です。

ケーキとコーヒーをいただきながら、三河湾に浮かぶ竹島を眺めると、慌ただしい日常を忘れさせてくれますよ。

ホテル本館以外にも敷地内に常磐館時代の建物が点在しています。

こちらは、開業の2年後、昭和11年建築に建設されたホテルに隣接する「六角堂」。開業当時は、聚美堂といい、お土産物店でした。

木造平屋建の6角形平面で、6注造屋根に瑠璃瓦を葺き、頂部には宝珠を掲げています。

空白の7年によって失われた
蒲郡ホテルの歴史を探る「歴史を探る会」

蒲郡クラシックホテルは、経営主体が変遷したこともあり歴史が不透明な部分が多く残されています。

そこで、2017年に「日本クラシックホテルの会」への参加を機に「蒲郡クラシックホテルの歴史を探る会」を結成。蒲郡ホテルや常磐館に関する調査を開始したところ、開業した年にベーブ・ルースが宿泊したことが判明。また隣接する「六角堂」に関しても新たな発見があり、建設はホテル本館と同時、1934(昭和9)年だと思われていましたが、棟札が見つかったことで、ホテルが建った2年後、1936(昭和11)年に建てられたことがわかったのだそう。

少しずつ情報が集まってきているそうなので、ぜひ情報をお持ちの方は、蒲郡クラシックホテルまで情報をお寄せください。

蒲郡クラシックホテルは、クラシカルな雰囲気と100年以上大切にされてきた歴史を感じられるホテルです。歴史ある建物や美しいインテリア、心地よいサービスで贅沢なひとときを過ごしてみてはいかがでしょう。

最後に。実は、明治村の正門を入った広場にあるモニュメントの池の中のタイルは、常磐館浴室の壁のタイルが使用されています。ぜひ明治村へ訪れた際には池のタイルをチェックしてみてくださいね。

INFORMATION

蒲郡クラシックホテル

所在地

愛知県蒲郡市竹島町15-1

電話番号

0533-68-1111

公式サイトURL

https://gamagori-classic-hotel.com/

海辺の文学記念館

所在地

愛知県蒲郡市竹島町15-62

営業時間

9:00~17:00

料金

無料

定休日

年中無休

電話番号

0533-67-0070

公式サイトURL

https://ubkinenkan.com/

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メイジノオト編集部

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