記者
ライターいずのうみ
2023/06/23
大阪のランドマーク「あべのハルカス」がそびえ立つ大阪市阿倍野区。
静かな住宅街のなかに、江戸川乱歩の大ファンのオーナーが運営する「金魚カフェ」があります。
金魚カフェの店内には江戸川乱歩の書籍、作品の怪奇・不気味さをイメージさせるような小物や置物がたくさん。建物は大正時代に建てられているので、乱歩が生きた時代の名残もあちこちに感じられます。
今回は、金魚カフェの魅力をたっぷりとお伝えします!
大正14年に建てられた長屋をそのまま活用している金魚カフェ。
長屋なので縦に長く、店内に入ると手前にカウンター席、奥に座敷とテーブル席があります。
座敷の席はちゃぶ台があり、ゆったりとくつろげます。
日本人形や鏡台、金魚の水槽もあり、昔ながらの日本らしい雰囲気に包まれています。
一番奥のテーブル席はレトロな洋館風。
座敷と空間が繋がっていますが、水槽が仕切りとなりガラリと雰囲気が変わっています。
店内にはレトロな小物や置物があちこちに飾られていますが、これらはオーナーの浅井さんが趣
味で集めたものです。中には日本人形や薬屋の看板などお客さんがくれたものもあるそう。
歴史を感じられる建物の雰囲気も相まって、空間によく馴染んでいます。
しかし、中には異彩を放っている置物も……。
少し不気味な雰囲気の置物が点在していて、乱歩作品の怪奇・猟奇的な世界観をイメージさせます。
オーナーの浅井さんが江戸川乱歩にハマったのは『芋虫』がきっかけでした。
作品に出会ったのは18歳ごろ。初めて読んだ「エログロ」にとてつもない衝撃を受け、乱歩の作品を読むようになりました。
グロテスク、エロティック、猟奇的な乱歩の世界観に魅了され、また、もともと犯罪心理学の本を
読むことも好きだったこともあり、気づけば乱歩のファンになっていたと話します。
※『芋虫』:戦争で両手両足・味覚・聴覚を失った須永中尉の妻、時子(主人公)。
時子は夫を虐げることで快感を得ていたのだった。あることがきっかけで夫の眼を潰してしまう時子は、夫の身体に「ユルシテ」と指で書いて謝罪するが……。
乱歩の短編小説の中でもグロテスク趣味の極致とも言える凄惨な作品。
店内には乱歩の写真や『貼雑年譜(はりまぜねんぷ)』をはじめ、数々の著書が並べられていま
す。『貼雑年譜』は、乱歩が収集、整理、保存した膨大な資料を貼り付けたスクラップブック。乱歩
の手紙や生原稿、メモ書き、新聞・雑誌の切抜き、チラシやパンフレット、自著の新聞広告などが
載っていて、ファン必携の本とも言えます。
これらの本は、店内で過ごしながら自由に読んで良いとのこと。乱歩の世界観に浸りながら作品
を読めるのはファンにとってはたまりません!
カウンター席の上には動く天井板があり、日常のかすかな振動が重なって、知らないうちに天井
板がずれていたこともあったそう。『屋根裏の散歩者』が現実になったようで胸が踊ります。
※『屋根裏の散歩者』:映画化やドラマ化されている乱歩の人気作品の一つで、明智小五郎が登
場する短編推理小説。主人公の郷田は探偵の明智小五郎と知り合ったことから「犯罪」に興味を
持ちはじめる。あるとき、下宿の押し入れから屋根裏に行けることに気付き、他人の私生活を覗く
快楽にひたるうちに、ある下宿人の殺害計画を思いつくが……。
金魚カフェで一番の人気メニューは、金魚鉢に入ったクリームソーダ。
見た目にも楽しく、SNSで見かけてお店に来る方も多いようです。
メープルトーストやチーズトースト、アップルパイなどのフードメニューもあるので、ぜひドリンクと合わせて味わってください。
個性的な小物や置物に囲まれて、乱歩の世界観が楽しめる金魚カフェ。過去には三重県からは
るばる訪れた乱歩ファンもおり、乱歩作品が好きな方には一度は訪れてほしいスポットです。
あちこちに残る大正時代の名残を感じるのも楽しいのではないでしょうか。
ちなみに、浅井さんおすすめの乱歩作品は『孤島の鬼』『パノラマ島奇譚』『屋根裏の散歩者』と
のこと。まだ読んだことがない方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
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所在地 |
大阪府大阪市阿倍野区阪南町1-52-5 |
---|---|
営業時間 |
13:00~19:00 |
定休日 |
火・水曜日 |
電話番号 |
06-6622-0021 |
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