記者
ライター山村 咲木
2022/03/27
普段、何気なく使っている照明。スイッチひとつでパッと明るくその場に光を差し込み、私たちの暮らしを照らしてくれます。街を歩けばいたるところにライトや街灯があって、真っ暗な夜でも手ぶらで歩くことができます。
そんな照明は、今を生きる私たちにとって欠かすことができない生活の一部となっていますよね。
また最近ではLEDの登場で、照明の世界にさらなる革命が起きているように感じます。私たちの身の回りには、暮らしをより豊かにしてくれる、そんな明かりたちが当たり前のように存在します。
では、電気やガスのなかった時代を生きた人たちが、どのようにして暗闇に明かりを灯していたのでしょうか。
明かりのはじまりは、木や葉などの植物を燃料とした火でした。その後、植物だけではなく魚など動植物の油からつくられた燃料を使用するようになります。
昔ながらの照明と言われると一番に思い浮かぶのが「ろうそく」ですが、昔のろうそくはかなり高価で一般庶民からすると身近なものではありませんでした。
行灯が描かれた、百人美女(転載:国立国会図書館デジタルコレクション)
江戸時代に入ると、日本では灯油を用いたさまざまな照明が世間に広まっていきます。その中でも代表的なものが「行灯(あんどん)」。行灯とは、油皿に灯芯を浸しそこに火をつけ、障子紙が貼られた木枠で被せたもの。室内用はもちろん持ち運びができるものなどいろいろな形があり、中には天井から吊るしたり壁にかけたりするものもあったのだとか……。
江戸末期になると、石油ランプが日本に伝来。新たな明かりは、それまでの行灯では考えられないほどの明るさで、当時の人々を驚かせたそうです。
小林清親『浮世絵版画/日本橋夜』(東京国立博物館所蔵)「ColBase」収録
明治時代には西洋から伝わったガス燈や電燈が日本でも使われるようになり、人々の生活をより快適に照らしました。
文明開化によって人々の暮らしを照らす照明の歴史は、大きく変わっていったのですね。
博物館明治村には、明治当時の面影を残した照明がたくさんあります。昔のランプや照明って、今見るとヴィンテージ感があって、ひとつ一つのつくりが丁寧かつ上品なデザインのものが多いですよね。照明・明かり・空間の融合は、それぞれ独自の良さを発揮します。
今回は、博物館明治村を訪れたらぜひチェックしてほしい、レトロでトレビアンな照明たちをご紹介します!
明治村の中でも一際存在感を放つ「帝国ホテル中央玄関」。この中では、帝国ホテル中央玄関独自の世界観のある建築と照明のコラボレーションを楽しむことができます。
「光の龍柱」
メインロビーにある、「光の龍柱」。この柱は3階まで吹き抜けになっており、大谷石の隙間からこぼれるあたたかい光が、訪れる人を出迎えてくれます。高くそして美しい「光の龍柱」を前にすると思わず声が出てしまいます。
帝国ホテル中央玄関を設計した建築家・フランク・ロイド・ライトは、建築とともに照明や椅子などの家具や食器までもデザインしていたそう。ライトによってつくり上げられた空間は、統一感がありなにか取り込まれるような空気をもつくり出しています。
帝国ホテル中央玄関内に、幾何学模様がレトロで可愛らしい照明を発見!照明から光が溢れ影ができる姿は、なんとも美しく妖艶で眺めているだけでうっとりしちゃいますね。
建築家・ライトが手掛けた独特な世界観と光の融合が楽しめる圧巻の「帝国ホテル中央玄関」。ぜひ、足を運んでみてはいかがでしょうか。
三重県庁舎「彩の間」
三重県庁舎「知事室」
こちらは、現存する最古の県庁舎「三重県庁舎」内の写真。洋風な庁舎に似合う、シャンデリアがゴージャスでモダンな雰囲気。当時のシャンデリアって、とても繊細で美しい輝きを放っていますよね。
「芝川又右衛門邸」内の照明
大阪の商人、芝川又右衛門の別荘「芝川又右衛門邸」。ここでは、洋風な建築の中に和のテイストが混ざり合った、おしゃれで真新しい空間を味わうことができます。今見ても斬新なデザインが多く、その中でも一際目を引くのがこちらの照明。
ハートマークがデザインされています。見つけるとちょっと嬉しくなる、そんな可愛い照明です。
「内閣文庫」内にある照明
明治時代、政府が中央図書館としてつくった「内閣文庫」。重厚感のある建物の天井を見上げると、そこにはなんとも可憐な照明が。花が開いたようなデザインは、モダンな雰囲気で洋館にぴったり。
「内閣文庫」にふさわしい、高級感のある照明がポイントです。
「品川燈台」
現存最古の洋式燈台である「品川燈台」。てっぺんに設置されている風見が、洋風で素敵ですよね!この燈台は、フランスから輸入された部品でつくられたのだとか。
博物館明治村の中で、大きくそびえ立つ「品川燈台」は、見応えたっぷりです。
「小那沙美島燈台」
こちらは、広島湾に浮かぶ小那沙美島に建てられていた燈台「小那沙美島燈台」。博物館明治村内でも水辺の近くに設置されており、当時の雰囲気を堪能できます。
博物館明治村にある2種類の電燈「皇居正門石橋飾電燈」と「二重橋飾電燈」。
「皇居正門石橋飾電燈」
「二重橋飾電燈」
「皇居正門石橋飾電燈」は、皇居前広場から皇居に通じる、石橋の上に設置されていた電燈。皇居造営によって架け替えられた二重橋に設置された「二重橋飾電燈」。
どちらもバロック様式のデザインが魅力的な電燈です。そのデザインは、宮殿にふさわしく上品かつ華やか。
博物館明治村で見る照明たちの魅力、いかがだったでしょうか。
明治維新の文明開化によって、さまざまな西洋のスタイルが日本へ伝わり、照明は進化を遂げていきました。その進化を実際に見て知ることができる、博物館明治村。ぜひ訪れた際には、いろいろな場所で光を注ぐ照明にも注目して見てくださいね!
記者
ライター山村 咲木
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