ワイシャツが「Yシャツ」でない理由とは?

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カルチャー ファッション 明治時代の文化

2022/03/27

ワイシャツが「Yシャツ」でない理由とは?

山村 咲木

記者

ライター山村 咲木

Tシャツの「T」は、袖を左右に伸ばしたときの形が「T」であることを意味しています。それでは、ワイシャツが「Yシャツ」ではない理由をご存知でしょうか?

ワイシャツが日本に定着したのは、明治時代のこと。その当時、ホワイト シャツ(White Shirt)のネイティブな発音が「ワイシャツ」に近いことから、名前がワイシャツに定着したとする説が有力とされています。ワイシャツはホワイトシャツからの造語だったんですね!

さらに、ワイシャツのことを「カッターシャツ」と呼ぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか。ワイシャツとカッターシャツ、この二つにはどのような違いがあるのでしょう。実はこれ、同じものを指しており、東日本方面では「ワイシャツ」、西日本方面では「カッターシャツ」と呼ぶ人が多いようです。

「カッターシャツ」の呼び名の由来は、スポーツメーカーの美津濃(明治39年創業|現:ミズノ)が、1918(大正7)年に販売を開始したシャツの商品名です。

ある日、ミズノの創業者・水野利八は、新発売する襟付きシャツの商品名を何にしようか、悩んでいました。 良いアイデアが思い浮かばないまま、利八は大好きな野球の試合を観に行きます。 試合が終わると、「勝った!勝った!」と声をあげて喜ぶ観客の姿を何度も目にしました。そこで、利八はひらめきます! 「勝ったー、勝ったー、カッター、カッターシャツ。縁起も良いし、これでいこう!」 こうして、襟付きシャツを 「カッターシャツ」と名付けて販売しました。 当時の学生たちの間で、とても評判になったようです。 (ミズノヒストリーより引用)

明治時代にワイシャツと一緒に定着していったのは、背広やネクタイ、ドレスなど……。今では当たり前のように日本人が着用している洋服が、明治時代に日本へとやってきました。

 

それでは、その洋装の歴史について少し覗いてみましょう!

 

洋装のはじまりは、フロックコート?

洋装が日本に広まっていったのは、19世紀ごろ。ヨーロッパでは外出着として着られていた「フロックコート」が、日本の洋装文化のはじまりとも言われいます。


フロックコートを着る男性たちの絵には、「最新流行の洋服スタイル」の文字が。

「フロックコート」とは、昼間の男性用の礼装。丈が長く、ダブルブレストのコートのことで、正式なものは黒色のものが多かったそう。明治時代を生きた偉人・伊藤博文がフロックコートを着用した写真を、歴史の教科書などでみたことがある人もいるのでは。

その後、西洋に背広が普及しはじめると​​、日本でも背広・ワイシャツ・ネクタイのスタイルが定着するようになりました。主に、男性の勤務服として、軍人や警察、皇室や駅員などの制服が洋装化していきます。


陸上戦闘部隊「自転車隊」の制服


「少年音楽隊」の制服

当時の「自転車隊」や「少年音楽隊」の写真を見てみると、制服が洋服なのがわかります。自転車や楽器などは、洋服と同じく文明開化の流れで明治から大正時代にかけて日本に取り入れられたもの。

 


洋装姿の福沢諭吉(転載:国立国会図書館デジタルコレクション)

「学問のすゝめ」で有名な福沢諭吉の背広姿の写真を発見。ワイシャツにピシッとネクタイをしめ背広を羽織った姿は、なんとも凛々しく着物姿とは違った魅力がありますね。

1872年(明治5年)の11月12日に太政官布告が出され、政府の役人たちは礼服に洋服を着用するように命じられました。このことで、11月12日は「洋服記念日」と定められるようになったのだとか。

 

そんな明治時代の洋装文化ですが、実際のところ一般市民の和装と洋装の割合は半々ぐらいでした。洋装は正装、和装は普段着。一般市民に洋装が定着したのは、大正時代のはなしだといいます。

明治の文明開化によって、洋服を着ておしゃれを楽しむ、そんな日本人が増えていきました。

 

レトロかわいい、明治時代のお洋服

「時代はめぐる」という言葉があるように、今見てもレトロでおしゃれな当時の洋服たち。

マントひとつとっても、さまざまなデザインがありますね。上品で美しいフォルム、西洋の魅力が詰まった素敵な洋服です。

 

そして、注目したいのが当時の帽子。昔を再現したドラマなどを見ていると、必ずといっていいほど帽子をかぶっているファッションを多く目にします。明治末期には和装・洋装問わず、カンカン帽が女性たちの中で大流行したそう。

帽子はファッションとして取り入れられていましたが、当時は昔からの名残で身分を表すものでもありました。そのため、多くの人が帽子を着用していたのです。

 

▼メイジノオトでは、ガイドスタッフたちの着こなしについても記事を公開しております。
・レトロな和柄にアンティークなレース。明治村スタッフの着こなしに注目!

こちらの記事では、当時さながらのファッションに身を包んだ博物館 明治村のスタッフコーディネートをみることができます。レトロで素敵な明治コーデをチェックしてみてくださいね!

 

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Writer

山村 咲木

記者

ライター山村 咲木

愛知県・名古屋市出身。大学ではメディアプロデュースコースを専攻し、広告やデザインについて学びました。卒業後は一般企業に就職。その傍らで、ライターとして活動中。おいしいものに目がなく、グルメな記事を中心に執筆活動を行なっています。趣味は、イラストを描くこと、喫茶店巡りをすること、映画・ドラマ鑑賞、フラワーアレンジメントなど。料理をすることも好きで、休日には手料理を家族や友人に振る舞っています。