記者
ライターいずのうみ
2023/05/18
『少年探偵団』や『D坂の殺人事件』など数々の名著を残し、日本の推理小説の礎を築いた江戸川乱歩(本名・平井太郎)。生涯で46回も引っ越したことでも知られていますが、そのうち東京での引っ越しは26回。乱歩の小説では東京の地名も多く登場しています。
そこで今回は「江戸川乱歩ゆかりの地・ぶらり」と題して、東京を巡ってきました。
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今回巡ったのは6箇所。乱歩が30年過ごした最後の邸宅や作品に登場した場所などを訪れました。
・旧江戸川乱歩邸
・文化アパートメント跡地
・団子坂
・東京ステーションホテル
・東京国立博物館
・浅草花やしき
いずれも鉄道・地下鉄の駅から近いため、一日あれば十分回ることができますよ。
画像:立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター
池袋駅西口から徒歩7分、立教大学のすぐ隣にあるのが「旧江戸川乱歩邸」。乱歩が40歳から70歳で亡くなるまで住み続けた邸宅です。現在は立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センターによって保存・管理されており、月曜日と金曜日の一般公開日は見学もできます。
門柱には「平井太郎(乱歩の本名)」「平井隆太郎(乱歩の息子)」の名前が掲げられています。
旧江戸川乱歩邸の玄関は展示スペースとなっていて、乱歩が実際に使用していた着物や執筆した書籍などの貴重な資料が間近で見られます。また、ビデオ撮影が好きだった乱歩が撮った映像も投影されており、乱歩と同じ視点で同じ景色を見ている気分になれますよ。
画像:立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター
玄関の左手には応接間があり、実際に乱歩が使っていたイスや扇風機、デスクなどがあります。雑誌編集者や親しい知人などを招待し、どのような会話をしていたのでしょうか。
画像:立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター
中庭へ抜けると、家屋に隣接して2階建ての土蔵が。乱歩が書庫として使っていたもので、中には乱歩が集めた書籍や自著などが所狭しと並んでいます。
画像:立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター
洋書にラベルを付けて作者名のアルファベット順に並べたり、人に貸した日付や相手の名前を記した代本板を残していたりと、人一倍几帳面だった乱歩。大切な江戸時代の和本は自身でカバーを作成し、本の幅やサイズに合わせてタイトルの大きさを調整してレタリングしていました(鉛筆で下書きした跡もあり)。
画像:立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター
土蔵は豊島区の有形文化財に指定されており、蔵書だけではなく「書庫ごと」保存されているのは極めて稀なケース。応接間や土蔵には入れませんが、建物の外側から中を見られるようになっています。
乱歩邸は戦争で焼失しなかったため、大正時代の土壌がそのまま残されている貴重な場所でもあるそう。裏庭にはツツジやモミジなど季節を感じられる植物や当時のまま残されているほか、乱歩自身がつくった防火水槽もあります。数々の名作が生まれた場所で、乱歩が眺めていた景色や邸宅での暮らしぶりに思いを馳せるのも楽しいひとときでしょう。
【旧江戸川乱歩邸】
住所 :東京都豊島区西池袋3-34-1
電話番号 :03-3985-4641
一般公開日 :月曜日、金曜日、土曜日(月2回程度。不定期)※祝日の場合は休館
開館時間 :10:30〜16:00
https://www.rikkyo.ac.jp/research/institute/rampo/
また、乱歩は池袋の西口から歩いて5分ほどにある老舗の和菓子屋「池袋 三原堂」に、手土産を買いによく訪れていたそうですよ。詳しくはこちらでチェックしてみてくださいね。
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池袋駅から地下鉄丸ノ内線に乗り、御茶ノ水駅にやってきました。御茶ノ水は、乱歩の多くの作品に登場する私立探偵・明智小五郎が探偵事務所を開いていた場所です。
探偵事務所は自宅も兼ねており、作品の中では「開花アパート」という建物にありました。このアパートのモデルとなったのが、大正14年に建てられた日本初の純洋式アパートメントハウス「文化アパートメント」と言われています。
文化アパートメントは現存しませんが、順天堂大学センチュリータワーが建っている場所が跡地とされています。順天堂大学センチュリータワーは、東京メトロ「御茶ノ水駅」から神田川沿いに歩いて徒歩7分ほどです。
少し足を伸ばして神保町へ行くと、乱歩が通ったとされる老舗の天ぷら屋さん「天麩羅 はちまき」もありますよ。
東京メトロで新御茶ノ水駅から千駄木駅へやってきました。1番出口のすぐそばにある「団子坂」は、乱歩が弟2人と古書店「三人書房」を経営していた場所です。そして、乱歩の代表作の一つとも言える小説『D坂の殺人事件』は、古書店のあった団子坂がモデルになっています。
坂のどのあたりに乱歩の書店があったのか、キョロキョロしながら上りました。
残念ながら書店自体はありませんでしがた、このあたりで乱歩が古書店を営んでいたり、乱歩自身が「本格探偵小説」と銘打った『D坂の殺人事件』の舞台となった場所かと思うと、ワクワクが止まりませんでした。
カーブのかかった坂道は、なかなかの傾斜。団子坂の由来は、「坂の近くに団子屋があったから」「悪路のため転ぶと団子のように転がってしまうから」などの説があります。
坂上には夏目漱石や森鴎外、高村光太郎などの文豪も住んでおり、団子坂は森鴎外の小説『青年』や夏目漱石の『三四郎』にも登場しています。
団子坂を上り、まっすぐ行くと鴎外の旧居「観潮楼(かんちょうろう)」の跡地に建てられた「森鴎外記念館」があります。
かつて明治時代の文豪たちが歩いた道を、作品を思い出しながらゆっくり歩くと、より楽しめそうですね。
東京メトロ千代田線で千駄木駅から二重橋前駅へ行き、そこから歩いて東京駅へやってきました。
目的は、東京駅丸の内側駅舎内で100年以上にわたり営業してきた東京ステーションホテル。『怪人二十面相』で明智小五郎と怪人二十面相が初めて対面した「鉄道ホテル」のモデルとなった場所です。
明智小五郎と変装した怪人が、鉄道ホテルの客室で虚々実々の駆け引きをする、緊張感あふれる場面が描かれました。
東京駅からJRで上野駅へ。日本最古の博物館「東京国立博物館」にやってきました。ここは、『怪人二十面相』のクライマックスの舞台となった場所です。所蔵品のすべてを盗みに入ると予告した怪人が明智小五郎に捕縛されるまで、ハラハラドキドキしながら一気に読んでしまった人も多いのでは。
また、東京国立博物館表慶館は『陰獣』の舞台になっているほか、『吸血鬼』の誘拐犯が身代金の受け渡しに指定した「帝国図書館」は、現在の「国際子ども図書館」です。
ほかにも上野動物園や五重塔など、乱歩は上野公園内の施設や場所をいくつもの作品に登場させています。
東京観光しながら、上野公園で江戸川乱歩ゆかりの地をめぐるのも楽しそうですね。
【東京国立博物館】
住所 :東京都台東区上野公園13-9
電話番号 :050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間 :9:30~17:00(入館は16:30まで)
https://www.tnm.jp/
上野駅から東京メトロ銀座線で浅草駅へ。雷門・浅草寺を抜けて浅草花やしきへやってきました。『屋根裏の散歩者』では、青年が浅草公園や花やしきをうろついて犯罪への欲求に悶々とする様子が描かれています。
また、『押絵と旅する男』は浅草の凌雲閣が舞台。「浅草十二階」と呼ばれ名所であった凌雲閣は、明治・大正時代の浅草のシンボルとされた眺望用の高層建築物です。日本初の電動エレベーターを備え、「雲を凌ぐほど高い」ことを意味し、凌雲閣という名称になったようです。現在はありませんが、跡地には記念碑が建てられています。
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乱歩の作品は浅草が登場するものが多く、ほかにも『蜘蛛男』『人間豹』『闇に蠢く』などが挙げられます。
浅草のエリアは昔ながらの趣が残っている部分が多く、「風流お好み焼き染太郎」は乱歩がひいきにしていた店だったとか。明治・大正時代から続くお店は乱歩が訪れたことがあるかもしれませんね。
【浅草花やしき】
住所 :東京都台東区浅草2-28-1
電話番号 :03-3842-8780
開館時間 :10:00~18:00
https://www.hanayashiki.net/
これにて、ゆかりの地ぶらり東京編は終了です。好きな乱歩作品に出てくる東京の土地や施設をめぐり、作品の世界観に浸ってみるのもおすすめですよ。
※当イベントは終了しております。最新のイベント情報は明治村HPよりご確認ください。
所在地 |
東京都豊島区西池袋3-34-1 |
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営業時間 |
10:30〜16:00 |
一般公開日 |
月曜日、金曜日、土曜日(月2回程度。不定期)※祝日の場合は休館 |
電話番号 |
03-3985-4641 |
公式サイトURL |
https://www.rikkyo.ac.jp/research/institute/rampo/ |
所在地 |
東京都台東区上野公園13-9 |
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営業時間 |
9:30~17:00(入館は16:30まで) |
電話番号 |
050-5541-8600(ハローダイヤル) |
公式サイトURL |
https://www.tnm.jp/ |
所在地 |
東京都台東区浅草2-28-1 |
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営業時間 |
10:00~18:00 |
電話番号 |
03-3842-8780 |
公式サイトURL |
https://www.hanayashiki.net/ |
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