記者
ライターいずのうみ
2023/01/24
日本の鉄道は、明治5年(1872年)10月14日(旧暦9月12日)、新橋ー横浜間で開業したことから始まりました。そして、2022年は鉄道開業から150年目となる記念すべき一年です。
そこで、東京都港区にある「港区立郷土歴史館」では特別展として「鉄道開業150周年記念 人物でみる日本の鉄道開業」を開催。今回は、こちらの特別展へおじゃまさせていただきました!
この記事は、2022年10月14日~12月18日に開催されたイベントの体験レポート記事です。
2階中央ホール
地下鉄「白金台駅」のすぐ近くにある港区立郷土歴史館は、歴史的建造物を活用し、港区の自然や歴史・文化への理解を深めると同時に、多くの人々が交流することを目的とした施設です。建物は、東京大学安田講堂などで知られる内田祥三(よしかず)氏による設計で、昭和13年(1938年)に公衆衛生院として建設されました。
建物の内部に中央ホールや旧講堂、旧院長室など、旧公衆衛生院の当時の状態を伝える部分も多く残されています。有料の常設展示室・特別展示室以外は無料で見学でき、カフェや図書室もあります。
日本初となる鉄道開業には、大隈重信や伊藤博文などの政治家をはじめ、エドモンド・モレルや井上勝などの技術者、福沢諭吉ら知識人といった、多くの人々の尽力がありました。鉄道開業150周年を記念した特別展では、歴史資料や出土遺物、浮世絵などのさまざまな資料と、鉄道開業に携わった人々を通して、日本の鉄道開業を紹介しています。
高輪築堤が描かれている錦絵
また、山手線の新駅「高輪ゲートウェイ駅」付近の開発工事に伴い発掘された高輪築堤も、日本初の鉄道路線の一部です。特別展では、高輪築堤に関する資料や写真、実物など、なかなか見ることのできない展示品も見られますよ。
「鉄道開業150周年記念 人物でみる日本の鉄道開業」は、以下のように大きく4つの章に分けて展示されています。
・第1章:日本人と鉄道との邂逅
・第2章:鉄道建設と高輪築堤
・第3章:鉄道開業と新橋停車場
・第4章:鉄道錦絵の世界
それぞれの歴史や見どころについて、ご紹介します!
幕末から明治時代初期にかけて、日本ではどのように鉄道の存在が知られていったのでしょうか。
日本の開国を求めて来航したアメリカのペリー、ロシアのプチャーチンはそれぞれ蒸気機関車の模型を持参します。この模型の走行を目撃した人々は、鉄道の存在を具体的に意識するようになりました。また、同じく幕末にさまざまな事情で海外へ行くこととなり、鉄道を体験したことで、その利便性や有益性を深く理解した人もいます。
日本人で初めて鉄道を利用したとされる、ジョン万次郎に関する資料など
そうした人々の体験談や書籍による情報などを通じて、日本人のなかで鉄道についての知識が広まっていきました。そして、慶応元年(1865年)には、営業運転ではないものの、長崎で本物の鉄道が約1ヶ月間走行し、人々を驚かせました。
日本で最初の鉄道を建設することが決まったのは、明治2年(1869年)11月の廟議(びょうぎ:朝廷の評議)でのことです。まずは新橋ー横浜間が決定しましたが、鉄道建設に反対する人は少なくありませんでした。
岩倉具視ら政府首脳に加え、大隈重信や伊藤博文などは鉄道建設に意欲的であった一方、西郷隆盛や前原一誠、黒田清隆などは反対派の中心人物として知られています。
日本で最初の鉄道建設には、イギリスで鉄道技術を学んだ井上勝や、お雇い外国人として建築工事を指導したエドモンド・モレルをはじめ、さまざまな出自の人がかかわりました。そのなかには、近代日本経済の父といわれる渋沢栄一や、日本近代郵便の父と呼ばれる前島密などもいたのです。
開業時の新橋ー横浜間鉄道路線図
政府の鉄道建設が決定したにもかかわらず、反対する兵部省(軍事事項を管掌する中央官庁)が高輪周辺の土地の測定を拒否。そのため、本芝から品川停車場までの約2.7kmの区間は海上に築堤を建造し、路線とすることになりました。
高輪築堤は大正時代に埋め立てのために姿を消しますが、JR高輪ゲートウェイ駅付近の再開発により発掘され、約100年ぶりに姿を現したと大きな話題になりました。
当時の築堤の様子や発掘時の築堤の写真なども展示されています。
発掘された高輪築堤の一部は、同じく港区内の新橋停車場跡に追加される形で、国史跡に指定されています。
高輪築堤から出土した開業期の枕木と双頭レール
高輪築堤のジオラマ(縮尺約200分の1)
高輪築堤の第7橋梁の前後、全長約950mの範囲を再現したジオラマは必見です!中央部約3分の1の範囲は陸地側も立体化され、鉄道開業時が再現されています。
築堤のすぐ横を通る船や軒を連ねる民家、往来する人々の様子が緻密に再現され、臨場感あふれる仕上がりです。
明治5年(1872年)の10月14日(旧暦9月12日)、ついに日本初となる鉄道として新橋ー横浜間が開業。日本の鉄道の歴史の幕開けです。4カ月前には先行して完成していた品川ー横浜間で仮開業していましたが、新橋ー横浜間全線完成後のこの日をもって正式開業となりました。
開業式には明治天皇や政府高官、外国公使らが出席。参加者は新橋ー横浜間を特別列車で往復し、横浜・新橋両停車場で開業式に参加しました。
当時の座席表も展示されています。そのなかには、鉄道反対派の中心人物だった西郷隆盛の名も。鉄道開業を促進した大隈重信や、板垣退助も同じ車両ですが、どのような会話がされたのでしょうか……。
新橋停車場や横浜停車場の写真、当時の資料などがズラリ。また、再開発に伴う調査で旧新橋停車場が発掘された際に、汐留遺跡から出土した汽車土瓶や湯のみなども展示されています。
鉄道の開業は、人々に大きな衝撃を与える特別なできごとでした。鉄道が開業した明治5年(1872年)、鉄道を描いた錦絵が爆発的に刊行されていることが、それを物語っています。
当時、錦絵はおみやげものとして親しまれており、新橋駅や高輪海岸、八ツ山などさまざまな場所で鉄道が走る風景が描かれました。なかには、明治4年の段階で鉄道を想像で描かれているものもあり、当時の人々が鉄道開業を楽しみにしていた様子もわかります。
特別展で展示されている錦絵は約50枚にものぼり、すべて港区立郷土歴史館所蔵のものです。歌川広重(三代)などの歌川派の錦絵も多く残されています。
4階中央ホールに設置されているフォトスポット
港区立郷土歴史館では、特別展の開催に合わせて関連展示&プログラムも開催されています。4階のギャラリーでは吉永陽一氏撮影の「港区の空鉄(そらてつ)写真展」、ぺたぞうでんしゃ王国による巨大立体レイアウトが見られる「出発進行!トイレール高層レイアウト」を実施。
出発進行!トイレール高層レイアウト
目の前に現れる巨大なプラレールは圧巻の迫力!新幹線など、毎日6種類の車両が走っています。
「日本を開いた石の道 高輪築堤」上映中の様子
4階の休憩室では、佐賀県制作の高輪築堤にまつわる映像作品「日本を開いた石の道 高輪築堤」の上映、浮世絵機関車の組み立て体験が行われています。
浮世絵機関車を作ろう!
浮世絵機関車の台紙は、郷土歴史館のWebサイトからダウンロードできるため、子どもと一緒にお家で作ってみるのも楽しそうですね。
浮世絵機関車のダウンロードはこちらから
また、中央エントランス外の前庭には、高輪築堤の石材や杭の展示もされています。
港区立郷土歴史館の特別展「鉄道開業150周年記念 人物でみる日本の鉄道開業」は、とても見応えがありました!歴史や人物の紹介もわかりやすく説明されているため、勉強にもなります。
関連展示&プログラムは誰でも無料で利用できるので、特別展と合わせてぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
※企画展は終了しております。
【港区立郷土歴史館】
特別展開催期間:2022年10月14日(金)~12月18日(日)
所在地 |
東京都港区白金台4-6-2 ゆかしの杜内 |
---|---|
営業時間 |
9時〜17時(土曜日のみ9時〜20時)※入館受付は閉館の30分前まで。 |
定休日 |
毎月第3木曜日(祝日等の場合は前日の水曜日)、年末年始(12月29日~1月3日)、特別整理期間、会期中休館日は12月15日(木) |
電話番号 |
03-6450-2107 |
料金 |
特別展観覧料:大人400円、小・中・高校生200円 |
公式サイトURL |
https://www.minato-rekishi.com/ |
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