鹿鳴館の椅子の謎

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インテリア 明治村ガイド 歴史

2026/02/04

鹿鳴館の椅子の謎

二十四節気にそえて 1

 

古くから用いられている季節区分に「二十四節気」があります。「二十四気」、「二十四節」などとも呼ばれ、太陽の黄道上の位置によって、一年を二十四に区分したものです。

二十四節気は「立春」から始まることから、「立春」を機に二十四節気ごとに、明治村の所蔵資料などにまつわるあれこれを紹介していきたいと思います。(内容は二十四節気には関係ありません。)

 

<立春>        冬の寒さが峠を越し、春のきざしが感じられるとされる日『新明解国語辞典』

 

 

 

鹿鳴館の椅子(上)

竹塗り小椅子

 

明治村では2種類の鹿鳴館伝来といわれている椅子を展示しています。ひとつはポスターなどにもよく用いられている「桜蒔絵小椅子」

桜蒔絵小椅子

 

もうひとつは「竹塗りの長椅子」です。

今回は「竹塗の椅子」について、2回にわたって紹介いたします。竹塗りの椅子は小椅子と呼ばれるひじ掛けのない一人掛けのものと長椅子の二種類があります。長椅子は明治村の西郷從道邸2階に展示されているので、建物ガイドに参加された方ならば、記憶されている方も多いのではないでしょうか。小椅子は明治村内の企画展や他館の展覧会に出品することはありますが、残念ながら村内でご覧いただく機会は多くありません。

 

 

<椅子の基本情報>

竹塗りの椅子は長椅子1脚と小椅子2脚、黒漆に桜蒔絵を施された椅子6脚とともに、1971年に社団法人霞会館(以後、霞会館と表記)より寄贈を受けたものです。

霞会館は、1874(明治7)年に「華族会館」として組織された団体で、1904年に社団法人華族会館となりました。第二次世界大戦後の1947(昭和22)年に社団法人霞会館と改称し、現在は一般社団法人霞会館として活動されている団体です。団体の名称に「会館」との名称がありますが、特定の建物があるわけではありません。

華族会館は、1890年に鹿鳴館を借り受け、1894年に鹿鳴館の払い下げを受け、以後「本館」として使用しています。1927年に霞ヶ関に新館を建設し、主な機能は新館に移りました。第二次世界大戦後、新館は進駐軍に接収されています。

鹿鳴館
貴顕舞踏の略図

話を元に戻します。椅子の大きさは幅44㎝奥行き43㎝高さ87.3㎝、製作者・製作年・用いられている樹種は不明で、椅子の座面の裏には「大正9年10月調●(不明)」というラベルが貼られています。

明治村の資料カードには、椅子の名称は当初は「竹塗り」との記載がありましたが、途中から「疑(擬の誤りか?)竹」という記載に変わっています。研究者によっては「模竹」という表現を用いられる方もいますが、現在明治村では「竹塗り」で統一しています。

竹塗り椅子を初めてご覧になった方に、「何でできた椅子だと思いますか?」とお尋ねすると、返ってくる言葉は百人が百人とも「竹」と言われると言っても過言ではないでしょう。そう、竹に見えます。でも竹ではありません。樹種は特定できていませんが、「木」であることは間違いありません。

装飾されている漆の技法も、竹のように見えるように漆で装飾していることから、竹塗りとしていますが、どの地域の漆工が手がけたものか、手掛かりは多くはありません。漆の文献を調べると「竹塗り」の漆工として、津軽の橋本市蔵と讃岐の玉楮(たまかじ)象谷(ぞうこく)が挙げられますが、彼らの作風との関連について、十分に調査ができていません。いわんや椅子のフォルムを作った木工の職人についてをや、どこの誰なのかという情報も今のところ手掛かりはありません。

 

 

 

 

<椅子と向き合うきっかけ>

この椅子に向き合うことになったきっかけは、博物館実習に来られた学生さんの実測図です。現在明治村では、毎年20名近くの博物館実習生の受け入れを行っていますが、当時(1994年)は、お問い合わせがあると、学生さんの専攻によって、こんなことやろうかなぁ、これやってもらおうかなぁ…と試行錯誤していました。その時ちょうど参加された学生さんが、美大の女子2名。さすが美大生、絵がうまい。そこで椅子の実測図の作成をしてもらうことになりました。その対象にしたのが、霞会館から寄贈された2種の椅子。桜蒔絵の椅子は見たままでしたが、竹塗りの椅子は違います。

それまでは、形(フォルム)は美しいけれど、なんだか変な装飾の椅子。赤茶色の漆だかペンキだかわからない塗料が、べったりと無造作に塗られていたように見えました。修理前の竹塗小椅子

 

しかし、さすが美大生女子たちは、実測図とのお題を出したのですが、椅子の表面の模様もしっかりスケッチしくれました。椅子の表面の漆だかペンキだかわからない帯からはみ出ている模様を見逃さずきっちりスケッチしています。彼女らの制作した実測図を見て、これは装飾なのイタズラなのか、「なに、これ?」となったのは言うまでもありません。

 

 

 

博物館実習生の実測図

 

博物館実習の直後、この椅子は高山市で開催される「日本の木の椅子展」に「『模竹蒔絵椅子』、日本近代のごく初期に制作された椅子」として出品されることになりました。借用に来られた方にも「ペンキじゃないですか~」と言われ、「ペンキ? 漆?」と疑問が渦巻く中、この椅子は多くのインテリア関係者が見学に来られた展覧会会場に鎮座しました。

返却されるや否や、「ペンキ? 漆?」の疑問を解決するべく、実行に移すことにしました。赤茶色の帯が模様であったとしたら、漆で塗られた可能性も捨てきれませんが、接収時の改変であればペンキに違いない…。イチかバチか、施設担当から塗料剥離剤のスケルトンを少し分けてもらい、試してみた。

予想通り塗られていたのはペンキで、塗られてから恐らく50年ほどは経っていたであろうが、スケルトンで落とすことができました。もちろん試したのは1㎝四方程度の小さな部分でしたが。(つづく)

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