記者
ライター山村 咲木
2021/08/14
「洋食」と聞くと、オムライスやハンバーグ、コロッケなどのおいしいグルメが浮かびますよね。そんな現代でもお馴染みの「洋食」が誕生したのは、実は明治時代なんです。
「洋食」のベースとなるのは、文明開化によって日本へと浸透した西洋料理。明治初期のころは限られた階級の人しか口にすることができなかった西洋料理ですが、後期になるにつれ庶民の間でも取り入れられるようになりました。その流れで、西洋料理が日本風にアレンジされていったものが「洋食」なのです。
ふたつの料理の分かりやすい違いは、パンかご飯か。西洋料理は基本的にパンと一緒に食べることが多いのですが、洋食は日本人の主食であるお米に合わせて作られています。
明治時代、報知新聞で連載されていた村井弦斎が書いた小説「食道楽」。この中には、和・洋・中問わず多種多様な料理が、当時のつくり方で書き綴られています。いわば明治を代表するレシピ本。
今回は、そんな「食道楽(上)」の数あるレシピの中から「シチュウ」作りにチャレンジしてみました!
「シチュウ」は、「食道楽(上)」の春の巻 第二十三・お豆腐の中で登場します。
【材料(約4人前)】
※小説内には正確な分量の明記がないため、お好みでご調整ください。
まずは下準備。野菜を切っていきましょう!
煮込み料理なので、大きめにカットしていきます。お好みできのこを追加したり、玉ねぎを白ねぎに変更したりと好きな具材をチョイスするのもおすすめ!
にんじんは乱切り、玉ねぎはくし切り、大根はいちょう切りにしてみました。じゃがいもは面取りをしておくと、型崩れ防止に。野菜によってそれぞれ合う切り方で、気持ち大きめにカットしてくださいね!
にんじんだけ、2〜3分ほど茹でます。これで野菜の下準備はすべて完了。
メインの牛肉は、小説内でも指示されているバラ肉をチョイス!こちらも食べ応えのある大きめのサイズでカットします。
「食道楽」のヒロイン・お登和によると、ロースのような高価なお肉はシチュウにすると筋張っておいしくないのだとか。ブロック状の牛バラ肉を置いているスーパーが少ないので、牛スジやタンなどで代用してもおいしく仕上がりますよ。
深めの鍋に水を入れ沸騰させたら、牛肉と塩(少々)を投入。ここから約2時間、弱火で軽くフタをして煮込んでいきます。
2時間じっくり煮込むと、テールスープのような旨みの詰まった良い香りが!
次は火が通りにくい野菜(にんじん・大根・じゃがいも)を入れて、約30分煮込みます。その後は、玉ねぎと調味料(塩・胡椒・バター)を加えて更に約30分煮込んでいきます。
塩・胡椒などの調味料は、お好みで調整してください。バターが多ければよりまろやかに、胡椒を効かせるとスパイシーに仕上がります。
ここで、赤ワインとトマトソースを入れ、小麦粉でとろみをつけます。シチュウっぽい色合いになってきました!
小説内では「米利堅(メリケン)粉」として登場する小麦粉。少しずつ加えながら、とろみと濃さを調整します。
ある程度混ぜ終わったら、おいしくなるように祈りながら一晩じっくり寝かせます。
一晩寝かせた「シチュウ」がこちら。ぎゅっと旨みが凝縮されて、お肉や野菜がトロトロに。全体的に味や香りがなじんだように思います。
ここからがラストスパート!食べる直前に、もう一度小麦粉でとろみをつけたら完成です。
2日かけて煮込んだ「シチュウ」が出来あがりました!明治時代の洋食文化に合わせて、ご飯と一緒にいただきます。
お肉も野菜もほろほろ!口に入れるとすぐに溶け、シチュウのうまみが口いっぱいに広がります。具材に大根があることで和風な仕上がりとなり、白いご飯ともよくマッチしています。味付けがシンプルなので、具材そのものの味をしっかりと感じることができますよ。
丁寧に長時間かけて煮込むことで、上品で少し高級感のある「シチュウ」に!明治時代に、こんなおいしいグルメが食べられていたなんて驚きです。大満足の仕上がりに、心もお腹も満たされました。
今回は、「食道楽」より「シチュウ」のレシピをご紹介しました。なんでも揃う今の時代と異なり、当時は特殊な調味料や調理器具を集めるのも一苦労だったはず。そんな中でも、明治〜現代にかけて多くの人から愛される「洋食」を生み出した明治時代の人々に感謝です。
みなさんもおうち時間に、明治時代のおいしいグルメを試してみてはいかがでしょうか?想像を超える逸品に出会えるかも!
記者
ライター山村 咲木
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