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江戸川乱歩初心者におすすめ!  少年探偵シリーズ10選

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文学

2023/06/03

江戸川乱歩初心者におすすめ! 少年探偵シリーズ10選

いずのうみ

記者

ライターいずのうみ

日本の推理小説の礎を築いた江戸川乱歩。『D坂の殺人事件』や『押絵と旅する男』『人間椅子』など、数々の名著を残した文豪です。

彼が初めて手掛けた少年探偵小説『怪人二十面相』の終盤で結成した少年探偵団が人気を呼び、1936年〜1962年にかけて30巻以上のシリーズ作品が誕生しました。このシリーズをきっかけに、ミステリー小説が好きになった方も多いのでは。


画像:国立国会図書館デジタルコレクション『怪人二十面相』より

今回は、数ある少年探偵シリーズの中から、特におすすめの10作品をご紹介します。文章が読みやすく軽快なテンポでストーリーが進行するため、初めて乱歩の作品を読む方にピッタリですよ。

怪人二十面相

『怪人二十面相』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

江戸川乱歩が手掛けた、子ども向けの推理小説の第一作目にして、彼の金字塔とも言われる作品。怪人二十面相は、二十の顔を持つ男と言われる変装名人で、高価な美術品や宝石を盗み出しては世間を騒がせていました。

ある日、実業界の大立者である羽柴壮太郎の家に二十面相から「6つのダイアモンドを盗み出す」という予告状が届きます。これをきっかけに少年探偵の小林芳雄、その師である名探偵・明智小五郎は、二十面相の巧みな変装と策略に惑わされながらも追い詰めていくのです。

明智小五郎と二十面相の見事な知恵対決だけでなく、聡明な小林少年が率いる少年探偵団も活躍する作品です。

 

少年探偵団

『少年探偵団』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

前作『怪人二十面相』の作中で誕生した少年探偵団。小林少年を団長に、10人の少年少女が物語の序盤から活躍します。

東京で次々と少女を誘拐する「黒い魔物」が、少年探偵団の篠崎君の5歳の妹を連れ去り、同時に篠崎家に伝わる「呪いの宝石」も盗み出してしまいました。少年探偵団と明智小五郎は、知恵を出し合い見事な推理でこの謎に迫ります。

作中では、BDバッジや万年筆型の懐中電灯など、少年探偵団の七つ道具も登場。主人公たちを鬼気迫る状況から救うこれらの道具に、憧れた方も多いのでは。

 

大金塊

『大金塊』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

少年探偵シリーズ第4弾にして、初めて二十面相が登場しない作品です。

東京郊外に建つ宮瀬家の洋館で、大胆不敵な強盗事件が起きました。犯人の狙いは、宮瀬家に伝わる巨額の埋蔵金の隠し場所を示す暗号文書。 捜査に乗り出した明智小五郎・小林少年と怪盗一味の手に汗にぎる攻防戦が繰り広げられます。

埋蔵金があるとされる岩屋島は、乱歩の作品『孤島の鬼』の舞台になった島と同じだとか。そして、これらの島は三重県紀北町の大島がモデルになったと言われています。

 

青銅の魔人

『青銅の魔人』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

戦後最初に発表された、少年探偵シリーズの第5作目。青銅でできた機械人間が都内に出没します。拳銃の弾丸を跳ね返し、警察官の追跡からさっそうと逃れて跡形もなく姿をくらませる、謎多き存在です。東京各地の時計店から高級な時計ばかりを盗んでいた青銅の魔人は、手塚家からも「皇帝の夜光の時計」を盗み出しました。魔人の謎を解き盗まれた時計を取り戻すために、明智小五郎と少年探偵団は数々のトリックを暴いていきます。

本作から、小林少年が新しく結成した「チンピラ別働隊」が大奮闘。戦争で親を亡くした子どもたちが集まり、少年探偵団の別働隊として事件解決の一翼を担いました。

また、この作品、横山光輝の大ヒット漫画『鉄人28号』の着想に影響を与えたと言われています。


透明怪人

『透明怪人』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

シリーズ7作目は透明人間が登場する、少しSF色の強い作品。目に見えない「透明怪人」と呼ばれる謎の人物が、連日事件を引き起こし東京中を震撼させます。透明怪人と透明怪人を作り出した科学者は、実は……。

操り人形や幻燈、腹話術、鏡など、これまでとは異色のトリックがいくつも登場し、明智小五郎と少年探偵団が華麗に暴いていきます。

 

怪奇四十面相

『怪奇四十面相』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

シリーズ8作目では、ついに二十面相が改名を発表します。

何度逮捕されても牢を抜け出す怪人二十面相。自分が二十面相と呼ばれているのを不満に持ち、「少なくとも二倍の顔を持っているから四十面相に改める」と新聞広告を出し、脱獄宣言と新たな犯行予告を提示します。

『大金塊』以来の宝探しストーリーですが、小林少年と四十面相との対決が大きな見どころです。

鉄塔王国の恐怖(原名:鉄塔の怪人)

『鉄塔王国の恐怖』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

シリーズ10作目。当時連載していた雑誌では『鉄塔の怪人』でしたが、ポプラ社から刊行される際に『鉄塔王国の恐怖』とされました。

夜の銀座に突如現れた巨大なカブトムシ。ピストルの弾丸も弾き返すほど硬く、車を破壊するなどして一通り暴れるとこつぜんと姿をくらませてしまいました。そのしばらく後、ある大会社の社長宅に使者が現れ、山奥に作った王国のために一千万円を寄付しろと迫ります。寄付を断ると社長の息子を誘拐するという無茶な要求に、明智小五郎と少年探偵団が謎の究明に乗り出しました。少年を守るために勇ましく振る舞う小林少年の姿も必見です。

乱歩の作品『妖虫』の着想を取り入れてリメイクされており、従来の乱歩らしさも垣間見える作品です。

灰色の巨人

『灰色の巨人』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

シリーズ12作目。東京のデパートの宝石博覧会で、志摩の真珠王が出品した三重の「真珠の宝塔」が泥棒に盗まれました。泥棒はアドバルーンで空へと逃げてしまいます。その後、「灰色の巨人」と名乗る怪人が「にじの宝冠」を盗み出し、怪人を追いかける少年探偵団がたどり着いたのは、サーカスの大テントでした。サーカス団に混じった怪人たちを相手に、明智小五郎と少年探偵団の格闘が繰り広げられます。

犬のシャーロックが活躍するなど、新しい展開や爽快なアクションが楽しめる作品です。

悪魔人形(原名:魔法人形)

『悪魔人形』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

シリーズ17作目。連載当時は魔法人形というタイトルでしたが、ポプラ社から出版される際に改題されました。(旧版のみ)

小学生の女の子ルミとドリは、公園で腹話術師の老人に出会います。人形を見せてくれると話す老人について行ったルミは、老人の魔術で自分自身が人形にされそうに……。小林少年が女装したり少女探偵の花崎マユミが活躍したりと、少女の読者を意識した要素も楽しめます。魔術、人形、不思議な地下世界、ミステリーとホラーのいいところを詰め込み、スピード感あふれる展開も大きな魅力です。

奇面城の秘密

『鬼面上の秘密』著:江戸川乱歩/出版:ポプラ社(挿画:柳瀬茂)

シリーズ18作目は、再び明智小五郎VS怪人四十面相物の戦いが繰り広げられます。舞台は四十面相の秘密の砦となる奇面城。レンブラントの絵を盗もうとした四十面相は、警察の追っ手を逃れ奇面城に身を潜めます。しかし、密かに四十面相の鞄の中に隠れていたポケット小僧が奇面城への潜入に成功。明智小五郎へ場所を伝え、四十面相の逮捕劇がはじまります。

ポケット小僧はチンピラ別働隊員の一員で、12歳だけど6〜8歳くらいにしか見えないほどの小さな少年。身体の小ささを武器に大活躍します。

本作は、四十面相の部下や警官も大勢登場し、スケールの大きさが特徴。また、朝の散歩を趣味にしたり恋人のような女性がいたりと、四十面相の意外な一面も見どころです。

少年探偵団は子どもから大人まで楽しめる不朽の名作

少年探偵シリーズは、子どもから大人まで楽しめる作品として今なお高い人気を誇ります。「読者諸君」「賢明な読者ならお気づきだろうが……」など、作中でときおり乱歩から読者へ呼びかけてくるのも、物語に引き込まれるポイントでしょう。

今回ご紹介した作品のほかにも、少年探偵団はいくつものシリーズがあります。それぞれ特色の異なるストーリーで、飽きずに読み続けられますよ。

江戸川乱歩の作品を読んでみようと思った方は、ぜひ少年探偵シリーズを手に取ってみてはいかがでしょうか。

少年探偵シリーズをモチーフとした謎解きアトラクション

「明治謎解きアトラクション『江戸川乱歩の不完全な事件帖〜十二面相からの予告状〜』」(2023年2月25日〜7月23日)では、今回ご紹介した作品をはじめとした少年探偵シリーズの原作をオマージュした色とりどりの謎解きゲームを開催しています。

 

怪人二十面相

最難関Scoop05「怪人十二面相」として、『所蔵する国宝をすべて頂戴に参上する』という予告状に対し、主人公らと”十二面相”の”力と力”、”知恵と知恵”が火花を散らす一騎打ちの闘争劇を繰り広げます。

大金塊

お子様でも安心なScoop00「黄金の塊」として、この町に伝わる『黄金の塊』と呼ばれるお宝を守るべく、太郎少年探偵団が立ち上がります。

青銅の魔人

取材の手はじめに最適なScoop01「赤銅の悪魔」として、赤銅色に輝くものをぶら下げて歩く女が登場。「赤銅の悪魔」とは一体……。

透明怪人

少し難易度の上がるScoop02「透明人間」として、姿の見えない敵を追い、主人公らの愛犬が活躍します。

鉄塔王国の恐怖

Scoop03をクリアした記者さんだけが挑むことのできるScoop04「煉瓦楼閣の恐怖」。原作さながらの”のぞきカラクリ”が不思議な世界へと導きます。煉瓦楼閣の世界を『覗いて解く』という、これまでにない解き心地を味わえます。

灰色の巨人

すぐに挑戦できるもので最も難易度の高いScoop03「灰色の宝冠」として、冒頭で『虹色の宝冠』の強奪予告状が届くことで事件がはじまります。『虹色の宝冠』と『灰色の宝冠』の関係性やいかに。

【イベント情報】

 

※上記イベントはすでに終了しております。現在開催中のイベントは明治村HPよりご覧ください。

 

 

▼こちらも合わせてチェック!

・いま、改めて読みたい!江戸川乱歩のおすすめ作品10選
https://www.meijimura.com/meiji-note/post/rampo-10selections/

 

・生涯の引っ越し46回!?サボり癖で仕事も転々。江戸川乱歩の意外な一面
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INFORMATION

博物館 明治村

所在地

愛知県犬山市字内山1番地

営業時間

月毎に変更します。詳細はHPでご確認ください。

定休日

不定休。詳細はHPでご確認ください。

電話番号

0568-67-0314

料金

大人2,000円 シニア・大学生1,600円 高校生1,200円 小中学生700円

公式サイトURL

https://www.meijimura.com/

Writer

いずのうみ

記者

ライターいずのうみ

愛知県名古屋市在住のライター・編集者。コピーライター3年、広告代理店でメディア編集者3年を経て、現在はフリーランスとして活動しています。これまでに金融やSDGs、ファッション、美容などさまざまなジャンルのメディアを担当してきましたが、グルメと旅行のジャンルが最も得意です。趣味は国内旅行(47都道府県制覇!)、読書、お酒。犬と猫を飼い、毎日楽しく過ごしています!