記者
ライターいずのうみ
2024/12/25
記者
ライターいずのうみ
門松は家の玄関や門の前に立てられる、正月飾りの一つです。松や竹を使い、いかにも縁起が良さそうな華やかさがありますが、門松を飾る意味を知っていますか?門松に使う竹の数や飾る場所、期間など、実はそれぞれに意味が込められているようです。
今回は、意外と知られていない「門松」について、詳しくご紹介します。
昔から、毎年元旦には新年の幸せをもたらすために「年神様」が家々に訪れると信じられています。年神様は、一年の福や徳を司る「歳徳神」、五穀豊穣を司る穀物の神様などをまとめて信仰の対象とした神様です。
正月飾りのうち、玄関や門の前に飾る「門松」は、年神様が家を尋ねるための目印として伝えられてきました。また、門松は年神様が私たちの世界へ降りてきたときの拠り所としての役割もあります。
門松を飾る文化は、平安時代にはじまったとされています。しかし、当時は家の門先に松を立てるだけという簡素なものでした。時代とともに門松は変化し、現代では一年中落葉しない松、生命力が強く成長の早い竹、新春に花開く梅と、3つの縁起物「松竹梅」を使った門松が広く普及しました。梅のほかにも南天や葉牡丹を用いた門松も多く見られます。南天は「難を転じる」、葉牡丹は葉が何重にも重なっている様子から「吉事が重なる」などの縁起があるとされています。
門松は、徒然草にも門松が登場していることから、古くから人々の暮らしに根付いた文化であることが分かります。
「門松」というと、3本の竹が使われた門松をイメージする方も多いのではないでしょうか。日本は古くから陰陽道(おんみょうどう)という陰陽五行を起源とした思想体系の影響を強く受けています。陰陽道では、奇数は陽、偶数は陰と考えられているため、奇数である「3」は2で割り切れない縁起が良い数とされてきました。
また、3本の竹の長さが異なる門松は「7:5:3」の比率となっており、ここにも奇数が用いられています。
門松は一般的に玄関や門の外側に左右一対で飾られます。年神様が降りてくるときの目印となるように、家の外に正面を向けて置きましょう。本来は外からの邪気を防ぐために家の外と内の境界部分に飾るのが良いとされてきましたが、現代ではそこまで気にする必要はないでしょう。近年ではスペースの狭い場所や玄関内に、気軽に設置できるコンパクトな門松も販売されています。
また、マンションの場合は玄関の外が共有部分となるため、物が設置できない場合は玄関の内側においても問題ありません。
門松を飾るのは12月13日〜1月7日(関西は1月15日、そのほかも地域によって異なる)までとされています。これは正月の準備をはじめる日から神様がお帰りになる日までを指し、一般的に「松の内」と呼ばれる期間です。門松を飾りはじめるのは12月13日以降であればいつでも良いですが、12月29日、31日は縁起が悪いと考えられているため、避けた方が良いでしょう。
門松に使われる竹は、2種類の切り方があります。一つは写真のように竹の節から斜めに切られた「そぎ」。もうひとつは竹の節に合わせて水平に切られた「寸動」です。
「そぎ」の切り口の門松は、関東で多く見られます。もともとは徳川家康が三方ヶ原の戦いで武田信玄に負けた際、門松の竹を武田信玄に見立て斜めに切ったことからはじまったという説があります。現在では「そぎ」の切り口が人の笑顔に見えることから縁起が良いと捉えられています。
「寸胴」は、節が詰まっているように見えるため、お金が貯まる(詰まる)という意味が込められた切り口です。かつて室町時代から江戸時代までは寸胴が主流でしたが、比較的関西地方で多く見られます。しかし、お金を扱う銀行やデパートでは寸胴の門松を飾っているところも少なくありません。
年末年始の街を歩きながら、門松の切り口に注目してみるのもおもしろいですね。
博物館 明治村 宇治山田郵便局舎の門松としめ縄
正月に門松を飾る風習は平安時代から続くものですが、時代や地域性を反映しさまざまな様式へと姿を変えています。例えば江戸時代には、松の先を切らずに地面から家の2階屋根まで届くほどの高さのものが飾られていたこともありました。
博物館 明治村 札幌電話交換局の門松
また、本州の門松で使用される竹や黒松、赤松が自生しない北海道ではトドマツが使われ、しめ縄とともに玄関に飾られます。
橘神社の大門松
長崎の橘神社では高さ14m以上、胴回りは8mにもなる大門松が飾られ、世界一高い門松としてギネスに認定されています。
お正月飾りの門松は、毎年あちこちで飾られていますが、あまり意識して見たことがない方も多いのではないでしょうか。実はいろいろな意味が込められていたり、様式が異なっていたりと、興味深いものです。街なかで見かけたら、それぞれ見比べてみると違いがわかるかもしれません。
明治建築を移築・公開している博物館 明治村(愛知県犬山市)では、日本各地から移築した建造物の旧所在地にちなんだ門松やしめ縄が、12月中旬より飾られます。日本各地の歴史や伝統にふれられる正月飾りは、見て歩くだけでもいろいろな発見があるでしょう。
博物館 明治村 東松家住宅の門松
名古屋市の堀川近くにあった町家を移築した「東松家住宅」では、江戸時代における名古屋中心部の門松としめ飾りが飾られます。立派な見た目の正月飾りは、「尾張年中行事絵抄」に描かれたもので、現代では見られない珍しい姿です。
博物館 明治村 京都中井酒造の門松としめ縄
「京都中井酒造」の玄関の柱には、根曳きの松を半紙で包んだ門松が飾られています。関西地方で見られる門松で、根が張って成長していくことから根がついたままの「根曳きの松」が使われているのだそう。しめ縄は中井家に伝わる様式で、龍が玉を持っている姿を現しています。
正月飾りは幸福な一年になるようにと願いが込められた縁起物です。一つひとつの意味を紐解いていくと、さまざまな学びや発見があるでしょう。
博物館 明治村では1月2日(木)〜31日(金)まで、「日本各地の門松・しめ縄めぐり」のイベントを開催。このほかにもみんなで楽しめるお正月イベントを行うので、ぜひ足を運んでみてください。お正月らしい「あったかグルメ」も味わえますよ。
※記事は、2024年12月25日現在になります。
住所 |
愛知県犬山市字内山1番地 |
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営業時間 |
月毎に変更します。詳細はHPでご確認ください。 |
定休日 |
不定休。詳細はHPでご確認ください。 |
電話番号 |
0568-67-0314 |
料金 |
大人 2500円 高校生(要学生証) 1500円 小中学生 700円 |
公式サイトURL |
http://www.meijimura.com/ |
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