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明治村の「北里研究所本館・医学館」リニューアル! 新たに生まれ変わった常設展示の見どころをレポート

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建築 明治村ガイド 歴史

2025/05/28

明治村の「北里研究所本館・医学館」リニューアル! 新たに生まれ変わった常設展示の見どころをレポート

メイジノオト編集部

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メイジノオト編集部

 

2024年5月に常設展示がリニューアルした「北里研究所本館・医学館(博物館 明治村村内内)」。新しい千円札に北里柴三郎が肖像として採用されたことを記念して、常設展示が生まれ変わりました。

今回は、「北里研究所本館・医学館」のみどころをご紹介していきます。

 

 

 

 

北里研究所本館・医学館とは?

「北里研究所本館・医学館」は、もともとは北里柴三郎が創立した研究所です。北里柴三郎は、ドイツで細菌学者R・コッホに師事し、伝染病(※)研究の第一人者として活躍しました。

1915年に東京都港区白金に竣工。その後、1979年に解体され、1980年に博物館明治村へ移築されました。現在では、貴重な文化財として登録有形文化財となっています。

注釈: (※)現在では「伝染病」という言葉はほとんど使用されておらず、代わりに「感染症」という用語が一般的に用いられています。本記事内で「伝染病」という言葉が登場する場合は、歴史的な文脈や当時の表現を反映したものであることをご理解ください。

 

 

 

 

 

建物の鑑賞ポイント

① 目を引く段状の破風と八角尖塔

「北里研究所本館・医学館」は、中央正面に特徴的な意匠を持つドイツ・バロック風の建物で、木造2階建て、腰折れ屋根の天然スレート葺きです。

中央の寄棟部分には小塔があり、玄関の上部には段状の破風と八角尖塔があり、建物全体に瀟洒(しょうしゃ)な印象を与えています。

 

 

 

 

 

② 車寄と紋章

玄関の車寄せには、北里が純粋培養に成功した「破傷風菌」と平和の象徴である月桂樹を組み合わせた紋章があります。この紋章は、現在も北里研究所のシンボルとして受け継がれています。

建物の細部には幾何学をモティーフとした装飾が施されており、新しい時代のデザインが取り入れられている点も見どころです。

 

 

 

 

③ 北側配置の研究室
研究室は北向きに配置されています。北側からの安定した光は、顕微鏡での細菌観察や分析に適しており、光の変化が少ない環境が正確な研究を支えました。

こうしたことからも、当時の研究環境への細やかな配慮が感じられます。

 

 

 

 

 

常設展示のみどころ

① 細菌学研究に貢献した顕微鏡の歴史

建物に入るとすぐに北里柴三郎の胸像が出迎えてくれます。

北里柴三郎が師事したR・コッホら細菌学者たちが、病気の原因として細菌の存在を証明するため、顕微鏡を駆使した研究が進められました。

当時の顕微鏡の進化とその歴史的な位置づけに焦点を当て、北里柴三郎が生きた時代の顕微鏡や顕微鏡での研究に必要な器具を展示しています。

医学や科学技術がどのように発展してきたのかを学ぶことができ、研究の意義を改めて考えさせられる貴重なコーナーです。

 

 

 

 

 

② 日本における伝染病の歴史

各地の厄除けも展示されています。

こちらの展示では、伝染病の克服に向けた取り組みや、社会への影響を詳しく紹介しています。

かつて病気の原因は細菌やウイルスではなく、神罰や怨念、国政の乱れによるものと考えられていました。そのため、人々は加持祈祷やまじないに頼るほかなく、症状が自然に収まるのを待つしかありませんでした。

明治期に入ると、開国に伴う外国との交流でコレラなどの伝染病が爆発的に流行し、人々の病への認識が転換しました。

 

 

 

 

 

 

 

③ 伝染病克服の立役者としての北里柴三郎

破傷風菌の発見や血清療法の開発を成し遂げた北里柴三郎は、日本の感染症治療の基盤を築いた人物です。この常設展示を通じて、彼がどのように社会や医学の発展に貢献したのかを知ることができます。北里の研究は、個々の患者を救うだけでなく、公衆衛生の向上にも大きな影響を与えました。

特に、伝染病が頻繁に流行していた時代に、予防医学や衛生管理の重要性を広く訴えた点は見逃せません。また、彼が設立した研究所は、日本の医学研究の中心となり、多くの優れた医学者を輩出しました。

この展示では、当時の医療現場の様子や研究の苦労、科学がもたらした希望などを感じることができます。北里柴三郎の足跡をたどることで、医学と社会の発展に貢献した彼の偉大さを改めて実感できます。

>>北里柴三郎の功績について詳しく知りたい方はこちら

 

 

 

 

 

④ 体験型の展示コーナーも充実!

1階の展示室と2階の研究室では実際に顕微鏡をのぞけるコーナーも設けられています。特に2階では、当時と同じ北側の窓下に顕微鏡を設置。北里柴三郎らが行った環境で顕微鏡観察が体験できます。


白衣を着て研究者になりきる体験コーナーも用意されています。ぜひ北里柴三郎の助手になった気分で写真を撮ってみてくださいね。

 

 

 

 

 

 

 

感染症の歴史を振り返り未来を考える


コロナ禍を経験した私たちにとって、当時の感染症対策や社会的影響は決して遠い過去の話ではありません。感染症の歴史を振り返ると、現在の経験と重なる部分が多く、歴史が連続していることを実感させられます。

新しくなった「北里研究所本館・医学館」を訪れて、北里柴三郎の功績を通じて歴史を学び、未来へのヒントを見つけてみませんか?

北里研究所本館・医学館についてはこちら

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