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夏目漱石や芥川龍之介も!? <br>明治時代の文豪たちが書いたミステリー小説とは

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文学

2021/12/27

夏目漱石や芥川龍之介も!?
明治時代の文豪たちが書いたミステリー小説とは

いずのうみ

記者

ライターいずのうみ

日本における探偵小説といえば、『怪人二十面相』や『少年探偵団』が代表作となる江戸川乱歩が有名です。江戸川乱歩は、日本探偵作家クラブを創立したほか、私財を基に江戸川乱歩賞を創設するなど、日本の推理小説(≒探偵小説)というジャンルを確立した功績を残しています。

文学は、純文学と大衆文学に大きく分けられています。

【純文学】

(1)広義の文学に対して、美的情操に訴える文学、すなわち詩歌・戯曲・小説の類を言う

(2)大衆文学に対して、純粋な芸術を指向する文芸作品、殊に小説。

【大衆文学】

純文学に対して、大衆性をもつ通俗的な文学。推理小説・剣豪小説・家庭小説・ユーモア小説などと言う。
大衆文芸。

 

純文学は「文学性を重視した小説」と定義されており、「『文化とは何か』『文学はどうあるべきか』を追求している」と言えます。純文学の近代作家として、夏目漱石や芥川龍之介が広く知られています。

対して大衆文学は、「内容性に富んでいること」が重要視され、SFファンタジー、推理小説などがその類です。

そして、推理小説が分類される「大衆文学」とは対照的な、夏目漱石や芥川龍之介といった、いわゆる純文学作家たちも、実はミステリーと呼ばれる作品を残しています。

この記事では、明治時代を生きた文豪たちが残した、意外なミステリー小説をご紹介します。

 

そもそも、ミステリー小説とは?

 

ミステリー小説と聞くと、ある事件について謎解きや推理で真相を追求していくタイプの小説を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。確かに、「ミステリー」の言葉の意味には「推理小説」が含まれますが、このほか「神秘・不思議・怪奇」の意味も含まれます。

英語のmystery(ミステリー)は、ギリシア語の「ミューステリオン」を語源としていて、「神の隠された秘密、人智では計り知れないこと」を指す言葉です。そのため、広義的には推理小説だけでなく、超常現象や幽霊などのオカルト的な要素など、謎めいたことに強くそそられる人間心理をもっとも表しているものがミステリーだと言えます。

 

日本にミステリーが入ってきた!?

明治20年代から30年代にかけて、黒岩涙香(るいこう)が海外の探偵小説の翻案ものを発表。犯罪や謎の読解を魅力とする探偵小説の手法は、泉鏡花、幸田露伴、夏目漱石、森鷗外といった著名な文豪たちの作品にも取り入れられました。

その後、江戸川乱歩は自ら『二銭銅貨』『人間椅子』『怪人二十面相』といった探偵小説を手掛けていくとともに、「日本探偵クラブ」の設立、「江戸川乱歩賞の創設」など、日本の探偵小説を確立させていったのです。

 

明治生まれの文豪が手掛けた”ミステリー”小説

広義的な視点で「ミステリー」を捉え、日本におけるミステリー小説の導入を理解すると、江戸川乱歩と同じように明治時代に生まれていまなお多くの人に作品が読まれている文豪たちも、ミステリー小説を残してたことに行き着きます。ここでは、その一部としていくつかご紹介します。

 

①夏目漱石『琴のそら音』

画像:国立国会図書館 近代日本人の肖像「夏目漱石」より

 

明治時代がはじまる1年前の1867年に生まれた夏目漱石は、明治末期から大正初期にかけて活躍した、近代日本文学の文豪の一人とされています。『坊っちゃん』『吾輩は猫である』『こゝろ』など数々の代表作を残し、国語の授業の教科書で漱石の作品に初めて触れたという人も多いでしょう。

 

画像:国立国会図書館デジタルコレクション 漱石全集. 第2卷(短篇小説集) より

 

『琴のそら音』は、1905年(明治38年)の雑誌に掲載された短編小説です。

大学を卒業し官僚として働く主人公の靖雄(やすお)は、ある日、大学時代からの友人・津田の下宿先を訪れます。大学で幽霊についての心理作用を研究する学生の津田に、靖雄は自分の近況を話しました。下宿で世話をしてくれる婆さんが「犬の遠吠えが怖い」としきりに言ってきたり、婚約者がインフルエンザになったり……。津田は研究をしているときに聞いた「ある夫婦の妻が死んだときの奇怪なエピソード」を話します。夜も遅くなり、靖雄は津田から聞いた話を思い浮かべながら家へ帰りますが、そんなときに限って雨は降り出し、葬式の一行にも出会い、家に帰れば婆さんが「犬の遠吠えがいつもと違って変だ」と言い張る始末。不吉なことが重なり一睡もできなかった靖雄は、翌朝早くに婚約者の家に行くも、インフルエンザはとっくに治っていると言われてしまいます。

結局は主人公の”心配しすぎ”で終わるハッピーエンドなお話です。超自然的な現象を描くことが多い夏目漱石の作品の中で、ミステリーと銘打たれたものはありませんが、幻想と怪奇が織り込まれた異色な作品として、”ミステリー”と言えるでしょう。

 

②芥川龍之介『藪の中』

画像:国立国会図書館 近代日本人の肖像「芥川龍之介」より

 

1892年(明治25年)に生まれた芥川龍之介は、夏目漱石を師と仰ぎ、『羅生門』『鼻』『芋粥(いもがゆ)』『地獄変』など数々の有名作品を生み出しました。しかし、「ぼんやりした不安」を動機として35歳の若さで服毒自殺をしてしまった小説家です。彼の死後に創設された新人文学賞「芥川龍之介賞」(芥川賞)は、直木賞とともに日本でもっとも有名な文学賞として、現在も続いています。

 

画像:国立国会図書館デジタルコレクション 現代小説全集. 第1巻 (芥川竜之介集) よ

 

1922年(大正11年)に雑誌に掲載された短編小説『藪の中』は、未だ真相が見出されていない作品です。物語は平安時代のある藪の中を舞台に、殺人と強姦という事件をめぐり、4人の目撃者と3人の当事者の証言で進んでいきます。しかし、それぞれの証言内容を照らし合わせると矛盾が生じ、犯人はわからないまま……。この話の犯人についてはいくつもの考察や論文が発表されるほど研究されていますが、著者が亡きいまでは、迷宮入りのミステリーと言えるでしょう。

話が錯綜して真相にたどり着けない複雑な構造は大きな波紋を呼び、証言の食い違いなどから真相がわからなくなるという意味の「藪の中」という言葉まで誕生した、歴史に残る名作です。

 

③志賀直哉『范の犯罪』

画像:国立国会図書館 近代日本人の肖像「志賀直哉」より

 

志賀直哉は1883年(明治16年)に生まれ、『暗夜行路』『和解』『城の崎にて』などの代表作を残した小説家です。「小説の神様」とも呼ばれ、多くの日本人作家に影響を与えました。志賀直哉は若いころには歌舞伎にハマり、三味線に合わせて義太夫節を語る「娘義太夫・女義太夫」の大ファンだったほか、生涯で26回もの引っ越しを繰り返したなどのエピソードもあります。

『范(はん)の犯罪』は、1913年(大正2年)の雑誌に掲載された短編小説。中国人の若い奇術師(マジシャン)である范は、ナイフを投げる演舞中に妻の頸動脈を切断し殺してしまいました。この演舞は大勢が見ている中で行われたにもかかわらず、故意か過失かがわかりません。しかし、裁判官が質問を重ねるにつれて、夫婦の秘密や「本統(本当)の生活」を求める范の葛藤が見えてきます。最終的に裁判官は范を無罪としますが、作中で繰り返される「本統(本当)の生活」が何を表しているのか、笵と裁判官がなぜ「昂奮」を感じたのか――。結末は出ているものの、謎めいた要素が残る作品です。

 

いろんな文豪の著書にも
隠れたミステリー小説があるかも!?

イメージ画像

 

推理小説を含め、ミステリーの分野は広い意味で捉えることができます。明治から大正、昭和にかけて活躍した文豪の作品も、じっくり読んでみると”ミステリー”と呼べるものがたくさんあるでしょう。誰もが知っている文豪・小説家も”ミステリー”を書いていたと思うと驚きがありますよね。

あらためてミステリーという概念を考えながら、いろいろな作品を読んでみると新たな発見があるかもしれません。

 

【イベント情報】

2022年春、明治村謎解きアトラクションの新シリーズとして「明治謎解きアトラクション『江戸川乱歩の不完全な事件帖』」がスタート!ミステリー小説や推理小説が好きな人は楽しめるはず。

新シリーズ開催を記念したプレイベントとして、2020年12月25日〜2022年2月20日まで、「明治謎解きアトラクション『江戸川乱歩の不完全な事件帖-二銭銅貨とニセ銅貨-』」も開催します。

詳しくはイベント特設サイトをチェック!

INFORMATION

博物館 明治村

所在地

愛知県犬山市字内山1番地

営業時間

月毎に変更します。詳細はHPでご確認ください。

定休日

不定休。詳細はHPでご確認ください。

電話番号

0568-67-0314

料金

大人2,000円
シニア・大学生1,600円
高校生1,200円
小中学生700円

公式サイトURL

https://www.meijimura.com/

Writer

いずのうみ

記者

ライターいずのうみ

愛知県名古屋市在住のライター・編集者。コピーライター3年、広告代理店でメディア編集者3年を経て、現在はフリーランスとして活動しています。これまでに金融やSDGs、ファッション、美容などさまざまなジャンルのメディアを担当してきましたが、グルメと旅行のジャンルが最も得意です。趣味は国内旅行(47都道府県制覇!)、読書、お酒。犬と猫を飼い、毎日楽しく過ごしています!