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いま、改めて読みたい!<br>江戸川乱歩のおすすめ作品10選

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文学

2021/12/03

いま、改めて読みたい!
江戸川乱歩のおすすめ作品10選

いずのうみ

記者

ライターいずのうみ

画像:立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター

小学生時代に『少年探偵団』を夢中で読んだ人も多いのではないでしょうか。私もあのインパクトの強い表紙絵が、小学校の図書館にあったことを鮮明に覚えています。江戸川乱歩の作品は、日本の探偵小説の草分けといわれる存在で、今も多くの人を楽しませています。

『D坂の殺人事件』や『怪人二十面相』をはじめ、いま改めて読みたい江戸川乱歩のおすすめ作品を紹介します!

 

子どもから大人まで多くの人を夢中にさせた
探偵小説の巨匠・江戸川乱歩


画像:江戸川乱歩『探偵小説四十年』より

江戸川乱歩は三重県名賀郡名張町(現在の名張市)に生まれ、3歳から高校を卒業するまで名古屋市内で過ごしました。大学への進学を機に東京へ移り、大学卒業後は職を転々としながらも乱歩が30歳のときに職業作家として独立。その後は『D坂の殺人事件』『怪人二十面相』『人間椅子』『少年探偵団』など数々の名作を生み出します。

戦争の影響で一時は執筆活動が制限されたものの、戦後には再び活動を再開。戦後は評論家やプロデューサーとして活動の場を広げました。自らが編集・経営に携わった探偵小説誌『宝石』からも多くの作家が乱歩の後押しを受けてデビュー。日本探偵作家クラブを創立し、探偵小説界全体の発展に尽力します。また、乱歩の私財を基に創設された江戸川乱歩賞は、以後、探偵小説作家の登竜門となり、多くの人気作家が誕生しているなど、日本の推理小説を確立した功績を残しています。

改めて読みたい!
江戸川乱歩のおすすめ作品10選

画像:江戸川乱歩『探偵小説四十年』より

没後50年以上経っている江戸川乱歩は、今でも多くの人に読まれ、愛される名作をいくつも生み出しています。

子どものときに読んだ『怪人二十面相』をはじめ、乱歩の小説をいま読み返してみると、当時とは違う発見があるかもしれません。

ここでは、改めて読みたい江戸川乱歩の作品をご紹介します。乱歩の作品を初めて読む人にもおすすめですよ。

 

①D坂の殺人事件

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『日本探偵小説全集. 第3篇 (江戸川乱歩集) 』より

1925年(大正14年)に発表された短編小説。日本で広く知られる名探偵・明智小五郎が初めて登場した作品です。

D坂にある喫茶店で出会った主人公の”私”と素人探偵・明智小五郎が密室殺人事件を追及していく本格探偵小説として注目を集めました。「D坂」は、乱歩が運営していた団子坂の古書店をモチーフに、店構えや近所の様子が描かれています。

 

②怪人二十面相

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『怪人二十面相 』より

1936年(昭和11年)、雑誌『少年倶楽部』に連載された、江戸川乱歩が初めて手掛けた少年探偵小説。作品の終盤で少年探偵団が結成され、シリーズへの転換点となった作品です。

乱歩は当初「もともと自分の書く大人向け雑誌の小説は筋が子どもっぽく、文章も優しいものが多かったから、少年雑誌に書いたって同じことじゃないか」と考え少年向け探偵小説を書きはじめたそう。

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『怪人二十面相 』より

東京中が変装の名人である怪人二十面相の話題で持ちきりだったある夜、この怪人二十面相が羽柴家の大邸宅から6個のダイヤモンドを盗み去る事件が起こります。怪人二十面相は、さらに羽柴家の次男を誘拐し国立美術館に収められている美術品との引き換えを要求。羽柴家の当主は名探偵明智小五郎に依頼をするも、明智が留守中のために助手の小林少年が代わりを務めることに――。

文章が読みやすく、ドキドキわくわくするストーリーの展開に夢中になって読んだ人も多いのではないでしょうか。

 

③少年探偵団

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『怪人二十面相 』より

1937年(昭和12年)から雑誌『少年倶楽部』に連載された、少年探偵小説シリーズの2作目。

東京中で「黒い魔物」の噂が広がり、次々と少女誘拐事件が起こるさなか、少年探偵団の一員である篠崎始の家に忍び寄る黒い影。「黒い魔物」は、篠崎家から「呪いの宝石」を盗み出します。続いて、篠崎始の妹と少年探偵団の団長・小林少年が誘拐されてしまいます。はたして「呪いの宝石」の言い伝えは事実なのか、そして黒い魔物の正体は何なのか――。これらの謎に、名探偵明智小五郎と小林少年率いる少年探偵団が挑みます。

『怪人二十面相』の終盤で結成された少年探偵団が序盤から大活躍し、団長の小林少年のアイデアから生まれた「BDバッジ」も登場。団員の証しとなるBDバッジは全国の少年が憧れた探偵グッズではないでしょうか。

 

④押絵と旅する男

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『闇に蠢めく』より

1929年(昭和4年)、雑誌『新青年』に掲載された短編小説。乱歩が富山県魚津市で蜃気楼を見た経験が元になり、執筆されました。この作品を発表する前に、同じテーマで一度書き上げていたものの、どうしても発表する気になれず、原稿を名古屋の大須ホテルで破り捨ててしまったというエピソードもあります。そして、その後に書かれた作品が『押絵と旅する男』となりました。

自分の作品の評価に厳しい乱歩ですが、この小説については「ある意味では、私の短篇の中ではこれが一番無難だといってよいかも知れない」と話すほどの自信作。押絵の中で夢幻と現実が時空を越えて交差する、乱歩独自の世界が広がります。

 

⑤パノラマ島綺譚

イメージ画像

『新青年』に1926年(大正15年)から翌年にかけて連載された中編小説。
売れない作家の人見廣介は自分と同じ顔をした大金持ち・菰田源三郎に成り済まして、孤島に巨大な理想郷・パノラマ島を作りはじめます。しかし菰田の妻・千代子に気づかれそうになったとき、人見の起こした行動と島の行方とは――。

作中でパノラマ島の舞台となる「M県S市」は、三重県鳥羽市(鳥羽は旧志摩郡)の離島とされており、乱歩は鳥羽造船所で働いていたときに、毎日職場の窓から島を眺めていたと言われています。

 

⑥屋根裏の散歩者

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『一寸法師』より

大正14年(1925年)、探偵小説雑誌『新青年』8月増刊号に掲載された短編探偵小説で、明智小五郎シリーズの5作目。
親の仕送りで暮らし、何をするのもつまらない主人公の郷田は、ある日素人探偵の明智小五郎と知り合い、「犯罪」に興味を持ちはじめました。あるとき、下宿の押し入れから屋根裏に行けることに気付きます。他人の私生活を覗き見る快楽にひたるうちに、郷田はある下宿人の殺害を計画。そこに現れた明智小五郎は、些細な事実から謎を解いていきます。

鳥羽造船所で働いていたときに押し入れでサボっていた経験や、大阪に住んでいたときに自宅の屋根裏を徘徊した経験などから着想を得たと言われる人気作品です。

 

⑦人間椅子

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『幻想と怪奇 』より

1924年(大正13年)に大衆文芸雑誌『苦楽』に掲載された短編小説。
毎朝夫の登庁を見送った後に自分宛ての手紙を読むのを日課としていた、女性作家の佳子。ある日1通の分厚い手紙が届き開いてみると、椅子の中で生活する醜い男の懺悔がつづられていました。その手紙の内容の真相とは――。

自作の椅子にもぐりこんだ椅子職人が手紙でつづる猟奇的妄想の世界をテーマにした、乱歩初期作品の代表作の一つ。

 

⑧二銭銅貨

二銭銅貨

1923年(大正12年)に雑誌『新青年』に掲載された短編推理小説で、探偵小説家江戸川乱歩の処女作です。江戸川乱歩のペンネームの元となったエドガー・アラン・ポー著の『黄金虫』を思わせる暗号物。日本初の本格的探偵小説と言われ、初期の日本人による推理小説の中でも傑出した作品と評価されています。

ある大泥棒が逮捕されたことをきっかけに、貧乏人だった”私”と友人・松村の日常が一変する、暗号トリック&どんでん返しの作品。

 

⑨百面相役者

画像:国立国会図書館デジタルコレクション『一寸法師』より

1924年(大正14年)に写真放置に掲載された短編小説。物語は名古屋の大須観音を舞台にしていると言われています。

主人公の”私”は仲良くしていた新聞記者Rに、百面相役者が出演する芝居小屋へ誘われました。百面相役者のめくるめく変装とそのリアルさに感動したものの、Rはどこか青ざめている様子。帰り際にRの部屋に誘われて行ってみると、「首泥棒」の事件が書かれた新聞記事と一枚の老婆の顔写真を手渡されます。私は百面相役者が変装していた老婆と同じ顔だったことに気付く――。

変態性慾、グロテスク、奇怪な殺人事件……と、短い話の中で乱歩の世界観を堪能できる作品です。

 

⑩孤島の鬼

イメージ画像

1929年(昭和4年)から大衆雑誌『朝日』で翌年まで連載された長編小説。三重県鳥羽市の漁村に泊まり込み、知人の岩田準一郎氏と何日もかけて構想を練って生まれた作品です。

主人公の”私(箕浦)”が「まだ三十歳にもならぬのに、ある恐ろしい体験をしたため一夜にして白髪となった」と始まり、その理由を箕浦が回想していく形で物語は進みます。

同性愛をストーリーの推進力としながら、サスペンスの要素も多く含まれているため、「江戸川乱歩の真骨頂」と評されることも。乱歩は、後の『蜘蛛男』を書く動機にもなった作品とも話します。

 

江戸川乱歩が生み出す独創的な世界に浸ろう!

画像:江戸川乱歩『探偵小説四十年』より

戦前の日本では小説の文章は表現に大きな制限がありましたが、戦後になるとラジオが普及し、アメリカの文化や映画なども広がりを見せます。表現の自由が広がった中で、江戸川乱歩の推理小説も大衆文学の一つとして、時代小説や歴史小説、風俗小説と並び庶民の娯楽として人気を集めました。

乱歩の小説には人形愛や窃視症(覗き趣味)、本格的なSM(サド・マゾ)、変装、少年・少女愛、フェティシズムなどの非日常的な要素が盛り込まれており、私たちを現実とは離れた別世界へ導きます。ハラハラ・ドキドキするものの、どこかわくわくするような、乱歩の独創的な世界を楽しみましょう。

江戸川乱歩の作品は青空文庫やKindleなどの電子書籍で無料で読むことができます。乱歩は短編小説も多いため、通勤や隙間時間にもおすすめ。

子どものときに少年探偵団に夢中になった方も、改めて読み返してみてはいかがでしょうか。

 

【イベント情報】

2022年春、明治村謎解きアトラクションの新シリーズとして

「明治謎解きアトラクション『江戸川乱歩の不完全な事件帖』」

がスタート!
さらに、新シリーズ開催を記念したプレイベントとして、2020年12月25日〜2022年2月20日まで、

「明治謎解きアトラクション『江戸川乱歩の不完全な事件帖-二銭銅貨とニセ銅貨-』」

も開催します。

詳しくは明治村公式サイトをチェック!

プレ公演「明治謎解きアトラクション『江戸川乱歩と不完全な事件帖~二銭銅貨とニセ銅貨~』」

 

出典:
『探偵小説四十年』
『江戸川乱歩とその時代』
鳥羽市観光情報サイト(パノラマ島奇譚)
http://tobakanko.jp/modules/know/index.php?p=756
シンフォニアテクノロジー「江戸川乱歩とシンフォニア」(パノラマ島奇譚)
https://www.sinfo-t.jp/100th/rampo01.html

 

INFORMATION

Writer

いずのうみ

記者

ライターいずのうみ

愛知県名古屋市在住のライター・編集者。コピーライター3年、広告代理店でメディア編集者3年を経て、現在はフリーランスとして活動しています。これまでに金融やSDGs、ファッション、美容などさまざまなジャンルのメディアを担当してきましたが、グルメと旅行のジャンルが最も得意です。趣味は国内旅行(47都道府県制覇!)、読書、お酒。犬と猫を飼い、毎日楽しく過ごしています!